森ビル株式会社

開発経緯

「麻布台ヒルズ」の計画地は、東西に細長く、高台と谷地が入り組んだ高低差の大きい地形です。敷地は細分化され、小規模な木造住宅やビルが密集し、建物の老朽化も進むなど、都市インフラからの整備が必要な状況でした。そこで、都市再開発法に基づく第一種市街地再開発事業によって、これらの課題を解決するとともに、道路や公園などのインフラを整備し、防犯防災面においても都市機能の更新を実現します。
平成元年(1989年)に「街づくり協議会」を設立し、以降、30年という長い年月をかけて、立場や事情の異なる約300人の権利者の方々と粘り強く議論を重ね、計画を進めてきました。平成29年(2017年)には国家戦略特区法に基づき都市計画決定され、平成30年(2018年)3月の再開発組合設立認可を経て、令和元年となった2019年8月5日に着工、令和5年(2023年)11月24日に開業しました。

開発前の計画地(空撮写真)
開発前の計画地(空撮写真)
開発前の計画地の街並み
開発前の計画地の街並み
開発前の計画地の街並み
開発前の計画地の街並み

コンセプト

緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街 - Modern Urban Village -

「麻布台ヒルズ」は、開発思想においても、世界に類を見ない、全く新しい都市づくりです。
テクノロジーが進歩し、働き方、暮らし方、そして生き方までもが大きく変わろうとしている今、「都市とはどうあるべきなのか?」「都市の本質とは何なのか?」という問いからプロジェクトがスタートしました。森ビルはこれまでも「都市の本質は、そこに生きる人にある」と考えてきましたが、改めて、人々がより人間らしく生きられる都市のあり方を考えました。

「麻布台ヒルズ」の開発コンセプトは「Modern Urban Village」。「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」です。そして、「Modern Urban Village」を支えるふたつの柱は「Green」と「Wellness」。圧倒的な緑に囲まれ、自然と調和した環境の中で多様な人々が集い、より人間らしく生きられる新たなコミュニティの形成を目指します。

コンセプトムービー|都市に生きる

「Green&Wellness」という新しい豊かさ

「Modern Urban Village」を支える2つの柱は「Green」と「Wellness」です。圧倒的な緑に囲まれ、自然と調和した環境の中で、多様な人々が集い、人間らしく生きられる新たなコミュニティを形成します。
「麻布台ヒルズ」では、はじめに人の流れや人が集まる場所を考え、街の中心に広場を据えて、シームレスなランドスケープを計画。その後、3棟の超高層タワーを配置しました。これは、まず建物を配置し、空いたスペースを緑化するという、従来の手法とは全く逆のアプローチです。高低差のある地形を生かして、低層部の屋上を含む敷地全体を緑化することで、都心の既成市街地でありながら、約6,000m²の中央広場を含む約2.4haの緑地を実現しました。水と緑がつながるランドスケープを整備し、自然あふれる憩いの場を創出するだけでなく、都心部におけるヒートアイランド現象の緩和にも寄与します。
また、「麻布台ヒルズ」では、都市づくりにおけるサステナビリティも推進します。街全体で「RE100」に対応する再生可能エネルギー電力を100%提供するなど脱炭素や資源循環を推進。国際的な環境認証プログラム「LEED」の2つのカテゴリにおいて、最高ランクとなるプラチナ認証も取得予定です。加えて、外部施設や医療機関とも連携しながら、この街で住み、働くことの全てが「ウェルネス」に繋がる仕組みを導入する予定です。
本プロジェクトでは、都市の低炭素化、生物多様性の保全、省エネルギー化、真に豊かな健康など、世界中が頭を悩ませている様々な課題に対する1つの解を提案します。

約6,000m²の広さを誇る緑豊かな中央広場
約6,000m²の広さを誇る緑豊かな中央広場

計画概要

多様な都市機能が徒歩圏内に集約された都市の中の都市(コンパクトシティ)

「麻布台ヒルズ」は、「アークヒルズ」に隣接し、「文化都心・六本木ヒルズ」と、「グローバルビジネスセンター・虎ノ門ヒルズ」の中間にあり、文化とビジネスの両方の個性を備えたエリアに立地しています。
約8.1haもの広大な計画区域は圧倒的な緑に包まれ、約6,000m²の中央広場を含む緑化面積は約24,000m²に上ります。延床面積約861,700m²、オフィス総貸室面積214,500m²、住宅戸数約1,400戸、「森JPタワー」の高さは約330m、就業者数約20,000人、居住者数約3,500人、年間来街者数約3,000万人で、そのスケールとインパクトは「六本木ヒルズ」に匹敵します。「麻布台ヒルズ」は、当社が理想とする「都市の中の都市(コンパクトシティ)」であり、これまでのヒルズで培ったすべてを注ぎ込んだ「ヒルズの未来形」です。

配置図
配置図
立面図
立面図

分断されていた交通網を整備、エリア全体の回遊性が大幅に向上

「麻布台ヒルズ」が位置するエリアは、桜田通り、外苑東通り、麻布通りに囲まれた中にありながら、東西を貫通する道路が未整備で、また、南北方向の主要な道路である通称「尾根道」は外苑東通りに抜けることができないなど、不完全な交通網が長年の課題でした。
しかし、「麻布台ヒルズ」によって、東西と南北の道路を整備することで、この地域の悲願でもあった道路ネットワークが完成します。さらに、六本木一丁目駅と神谷町駅を結ぶバリアフリー/アンブレラフリーの歩行者ネットワークも整備することで、周辺地区を含むエリア全体の回遊性向上に大きく貢献します。

分断されていた交通網を整備

施設概要

人の営みがシームレスにつながる街

「麻布台ヒルズ」は、人々の営みがシームレスにつながる街になります。オフィス、住宅、ホテルなどの施設ありきで都市を設計するのではなく、施設の垣根を取り払って、人の営みから都市づくりにアプローチしました。この街では、「暮らす」「働く」「集う」「憩う」「学ぶ」「楽しむ」「遊ぶ」など、人々の様々な営みがシームレスにつながり、人と自然とが調和し、人と人がつながり、刺激しあいながら創造的に生きられる新しい都市生活を実現します。様々な施設がともに連携し、人々に新たなライフスタイルを提案することで、緑豊かな街全体が学びの場となり、仕事場となり、我が家となり、遊び場にもなります。

オフィス グローバル企業のニーズを満たす国際水準のオフィス
総貸室面積約214,500m²、就業者数は約20,000人を想定。強固なBCP対策や街全体に対する「RE100」対応の電力供給など高い付加価値を提供。人々の自由かつ創造的な働き方をサポートします。
ヒルズハウス 街全体をワークプレイスにするための拠点「ヒルズハウス」
ワーカーが集うクラブハウスとしての「場」と、街の様々な機能やサービスをカスタマイズできる「仕掛け」を提供。街と企業が連携して理想的な働き方を模索し、生み出していきます。
Tokyo Venture Capital Hub 日本初のVC集積拠点「Tokyo Venture Capital Hub」
独立系ベンチャーキャピタルとコーポレートベンチャーキャピタル約70社が集い、スタートアップの成長に欠かせないリスクマネーを供給。日本経済活性化の起爆剤となることを目指します。
慶應義塾大学予防医療センター 健康寿命の延伸に貢献する「慶應義塾大学予防医療センター」
最新の医療機器と高い専門性を有する大学病院のスタッフによる高精度な人間ドックに加えて、個別の受診者のニーズに応じた最適な健診プログラムを展開。街の様々な施設とも連携し、街全体で人々の健康をサポートしていきます。
アマンレジデンス 東京 究極の非日常と穏やかさに包まれた「アマンレジデンス 東京」
世界各地、唯一無二の特別な場所でラグジュアリーリゾートを手掛けるアマンと組んだ、わずか91邸のほかにはないエクスクルーシブなレジデンス。
レジデンス 緑の中で、都市に生きる豊かさを最大化するレジデンス
長年にわたり蓄積してきた森ビルの住宅事業のノウハウを注ぎ込んだ、都市に生きることの豊かさ「ヒルズライフ」を余すことなく享受できるレジデンス。
ジャヌ東京 世界初登場のアマン姉妹ブランドホテル「ジャヌ東京」
アマンの新ブランド「ジャヌ」のホテルが誕生。全122室、都内ホテル最大級のウェルネス施設も備え、国内外から訪れるゲストを温かなホスピタリティでお迎えします。
インターナショナルスクール 都心最大級のインターナショナルスクール
「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」は、60ヵ国以上の国籍の生徒が在籍する、国際色豊かな学校。豊かな自然を感じられる環境の中、国際感覚に優れた、未来を担う子どもたちを育みます。
商業施設 新たな体験や楽しさを提供する商業施設
都心の真ん中にありながら、圧倒的な緑に包まれた環境の中に、ファッション、フード、ビューティー、カルチャー、アート、ウェルネスなど、約150店舗が集結。新たな体験価値を享受できる、豊かなライフスタイルを提案します。
麻布台ヒルズ マーケット 食の本質的な楽しさや豊かさを享受する「麻布台ヒルズ マーケット」
「世界に誇れる次世代型マーケットを創る」のコンセプトに賛同し、日本を代表する34の専門店が集結。単に販売するだけでなく、街の内外と協働し、学びや発見の場を設けることで、食の本質的な楽しさや豊かさを提供します。
麻布台ヒルズ ギャラリー 街の文化発信拠点「麻布台ヒルズ ギャラリー」
「街全体がミュージアム」をテーマに、街の文化発信の中核となる「麻布台ヒルズ ギャラリー」。美術館仕様の施設・設備を備え、アート、ファッション、エンターテイメントなど、多様なジャンルの文化を発信します。
森ビル デジタルアート ミュージアム 「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」
お台場で国内外から多くのお客様をひきつけた「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」が麻布台に移転。新たな作品や日本未公開作品も多数加わります。
パブリックアート 常生活とアートの境界をなくすパブリックアート
空間の壮大なスケール感とヒューマンスケールの融合、人間と宇宙の繋がりなどを感じられ、「麻布台ヒルズ」で生成される自然界のエネルギーを可視化するような作品を選定しました。
中央広場 広大な緑の中で人と人をつなぐ「中央広場」
四季ごとに表情を変える約320種の多様な植栽が広がり、人が触れられる緑を目指します。広場内の「麻布台ヒルズ アリーナ」からは、街の賑わいを創出します。

安全・環境・文化の取り組み

安全:地震発生時も生活・事業を継続するためにハード・ソフト両面で対策

「麻布台ヒルズ」では、安全・安心を支えるハード面強化にも力を入れており、万が一の災害時には、「逃げ込める街」となるべく、様々な取り組みを行います。
3棟の高層タワーには、適切な制振装置を導入することで、東日本大震災や阪神・淡路大震災レベルの地震が起きた場合でも、安心して事業継続が可能な耐震性能を備えています。
また、「森JPタワー」の地下にはコージェネレーションシステム(CGS)と地域冷暖房施設を導入。各街区にも非常用発電機を設置。さらに、災害などにより、周辺エリアで帰宅困難者が発生したときに約3,600人が一時滞在できる、約6,000m²の受入スペースを確保しています。

環境:緑豊かな空間の実現とともに、環境負荷低減を目指す

「麻布台ヒルズ」では、街全体で緑と水がつながり、自然あふれる緑豊かな空間を創出しています。また、環境負荷の側面では、街で使われる電気はすべてCO2排出ゼロの再生可能エネルギー電力を利用します。また、街全体にエネルギーを供給する高効率エネルギーセンターを設置し、複合用途のコンパクトシティならではの、効率的なエネルギー供給を実現します。
さらに、未利用かつ再生可能なエネルギーである下水熱を、「麻布台ヒルズ」全体における冷暖房の熱源の一部として活用することでCO2排出量の削減に貢献。そのほか、雨水や雑排水を再利用したり、街のパートナーと協働して資源循環を促進するなど、街を挙げて、環境負荷の低減を実現します。なお、国際環境認証「LEED」の予備認証で、最高ランクも取得しています。森JPタワーのオフィス・商業部分においては、環境性能に加え、健康性や快適性を評価する国際認証「WELL Core」の最高ランクのプラチナ認証を日本で初めて取得(2024年)しています。

文化:現代アートからエンターテイメントまで、多様な文化を世界に発信

「Green&Wellness」をテーマとする「麻布台ヒルズ」では、「街全体がミュージアム」をコンセプトに掲げています。総施設面積約9,300m²のミュージアムとギャラリーを中核として、オフィスや住宅、ホテルのロビーや広場など、街のあらゆる場所にパブリックアートを設置し、芸術・文化が一体となった街を創出します。

森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス
森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス

建築家・デザイナー

世界から超一流の才能が東京に集結

「麻布台ヒルズ」には、世界中から超一流の才能が結集し、一丸となって計画全体を練り上げてきました。3棟の超高層タワーの外観デザインは、アメリカのPelli Clarke & Partner(ペリ・クラーク・アンド・パートナーズ)が担当しました。世界各国でランドマークとなる超高層タワーをデザインし、国内では当社の「愛宕グリーンヒルズ」や「アークヒルズ 仙石山森タワー」などを手掛けています。Pelli Clarke & Partnerの創設者であり、偉大な建築家でもあるシーザー・ペリ氏は、「個々の建築デザインはより良い街を実現するためにあるのだ」という哲学をお持ちでした。それは私たち森ビルの思想とも一致するものです。

低層部のユニークな建築とランドスケープは、イギリスのトーマス・ヘザウィック氏がデザインしました。ヘザウィック氏は、ロンドンオリンピックの聖火台を始め、数々の独創的なプロジェクトを手掛けてきたデザイナーです。「麻布台ヒルズ」は、ヘザウィック・スタジオが日本で初めて手掛けるプロジェクトとなります。

森ビルが強いリーダーシップをもってプロジェクトの要となり、世界から集まった才能あふれるチームをまとめ上げることで、多様でありながら一体感のある、唯一無二の街が誕生します。

建築家・デザイナー

データシート

計画名称 虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業
所在地 東京都港区虎ノ門5丁目、麻布台1丁目および六本木3丁目の各地内
開発区域面積 約8.1ha
敷地面積 約63,900m²
  • 麻布台ヒルズ森JPタワー約24,100m²
  • 麻布台ヒルズレジデンス A約16,500m²
  • 麻布台ヒルズレジデンス B約9,600m²
  • ガーデンプラザ A,B,D約12,000m²
建築面積 約37,100m²
延床面積 約861,700m²
  • 麻布台ヒルズ森JPタワー約461,800m²
  • 麻布台ヒルズレジデンス A約169,000m²
  • 麻布台ヒルズレジデンス B約185,300m²
  • ガーデンプラザ A,B,D約43,800m²
オフィス面積 約214,500m²
緑化面積 約24,000m²
住宅戸数 約1400戸
店舗面積 約23,000m²
用途 事務所、住宅、店舗、ホテル、文化施設、インターナショナルスクール、診療所 他
階数
  • 麻布台ヒルズ森JPタワー64階
  • 麻布台ヒルズレジデンス A54階
  • 麻布台ヒルズレジデンス B64階
高さ
  • 麻布台ヒルズ森JPタワー約330m
  • 麻布台ヒルズレジデンス A約240m
  • 麻布台ヒルズレジデンス B約270m
  • ガーデンプラザ A,B,D約41m
着工 2019年8月
竣工
  • 麻布台ヒルズ森JPタワー2023年6月
  • ガーデンプラザ2023年6月
  • 麻布台ヒルズレジデンス A2023年9月
構造 S造(一部SRC造) 他
設計 森ビル(株)
施工 清水建設(株)、三井住友建設(株)、(株)大林組 他
施行 施行者:虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合、特定建築者:森ビル(株)