インターネットやデジタル機器の導入で仕事のツールは変化してきたが、“働く場所=オフィスのレイアウト”は何十年も前から同じまま。森ビルではこの点に疑問を持ち、実際の自社オフィスの一部を改装し、2009年9月に「MORI WORKING LAB」(以下MWL)を開設しました。
自らその効果を検証しながら様々な実験を行い、働きやすさや業務効率、生産性を向上させながらも、エネルギーコストの削減や環境に配慮した、知識情報化社会にふさわしいオフィスのあり方を提案しています。

ニュースリリース:実際の自社オフィスが実験場「MORI WORKING LAB」を開設
ニュースリリース:自社オフィスの実験場「MORI WORKING LAB」第1フェーズ調査報告

左)改装前のオフィススペース、右)改装後のオフィス「MORI WORKING LAB」

1)外光も有効活用。レイアウトの工夫で、室内照明を半減しながらも照度を確保

「紙の資料で仕事をしていた時代と違い、パソコンでの作業が大部分を占める現代のオフィスにおいて、700Lxもの照度が必要だろうか…?」
MWLではオフィス内照度を通常の半分の350ルクスに調整し、基準照度調整実験を実施し、同時に省エネ効果も検証しました。合わせて、通常窓際に配されることが多い管理職席をコア側に移動し、窓際をオープンな打合せスペースにするなどのレイアウト変更。
これにより、管理職のパソコンやデスクに差し込む外光を遮るために閉ざされていたブラインドを開け放つことが可能になりました。外光を有効活用することで、照明照度を半減させたにもかかわらず、日中は500Lxを超える照度を確保しています。なお、併せて実施した「自覚症調べ」では『照度が低いほうが目の疲れが軽減する』との回答も得られています。

左)上長席を窓際に配した場合:外光がパソコンに映り込む、光が強すぎるなどの理由で常時閉ざされているブラインド
右)上長席を内側に配した場合:ブラインドを開け放ち外光を活用。結果、室内照明を下げることができる

MORI WORKING LABの実際のレイアウト

2)MWLの各種取組で電力の大幅削減に成功

MWLは、改修前後で電力消費量が全体で約半分になりました。
これは基準照度の調整実験を目的に照明の点灯を半分にしているということと、フリースタイルアドレスの導入による、パソコンの待機電力の削減が主な要因となっています。
なお、空調負荷の数値は、照明を半減させることで電力消費量の負荷がなくなったためー16%程度減少していると予想しています。

電力消費量の比較(MWL開始前後)

空調負荷の削減

いち早く導入したMORI WORKING LABの見える化システム

2009年のMORI WORKING LAB開設と同時に、電力消費量を照明、コンセントに分けて計測して表示する「消費エネルギーの見える化」システムを開発し導入しました。これによりエネルギー消費実態の把握、省エネ計画の立案、省エネ効果の確認が可能となり、その後の節電対策に活用することが可能になりました。

3)フリースタイルアドレスを提案:節電しながらも、働きがいがある職場環境を維持

MWLでは、個々の業務パターンを踏まえ、多様化するオフィスワーカーのニーズに応えられるよう、業務の内容により働く場所や環境を自由に選択できる「フリースタイルアドレス」を導入しています。
2時間単位で席の予約をするという仕組みにより業務の計画性および効率性の向上に繋がり、またデスクトップパソコンをノートパソコンへと変更したこともあり、さらなる電力削減にも貢献しています。

75%の社員がコミュニケーション向上を実感

「フリースタイルアドレス」の導入により、被験者となった社員の75%が「以前のオフィスに比べコミュニケーションがよくなった」と回答。また、「違うグループの話題が耳に入るようになった」「気軽に打合せを行う機会が増えた」など、組織内の情報共有を促す効果が認められました。その他、「整理整頓が徹底されてよい」「気分転換になる」とのメリットも挙げられています。

フリースタイルアドレスとは…
固定席を持たず、「思考」「打ち合わせ」「CAD操作」など、各々の業務内容に応じてその時々に最適な座席スタイルを選択(2時間制)することができ、ワーカーの能力を最大限に引き出せるようにしました。MWLでは12種類のワークプレイスを用意しています。

左)打合せのしやすいフラスコ型デスク、右)個人作業用の集中デスク

左)10分程度のミーティングに最適なハイテーブル、右)ミーティングやチーム作業に最適なベンチシート

4)東日本大震災を受けての「MORI WORKING LAB」の新たな節電対策

東日本大震災による電力不足を受け、MWLでも更なる節電対策を行った結果、更に15%の電力削減を実現することができました。

  • 主な取り組み
  • 窓側スペースの終日(9:00~18:00)消灯
  • ノートパソコンの充電時間管理(充電は昼まで。午後はコンセントを外し、かつバッテリー低下設定を)
  • デスクトップパソコンの休止モード設定の徹底及び、離席時モニター電源のOFF
  • タイマー付コンセントの活用
  • NO残業デイの増加(週1⇒週2)および徹底
    ※MWLでは、2010年4月より毎週金曜日をNO残業デイに設定し実行してきましたが、2011年2月末以降は水曜日も設定しています。

2009年4月〜2011年6月までのMWL電力消費量

【MORI WORKING LAB】
企業の方のMORI WORKING LAB見学も受付けております。
森ビル株式会社 建物環境開発事業部内装部 TEL:03-6406-6690(平日10:00~18:00)

森ビルが提案する節電対策

  1. オフィスレイアウトの工夫が消費電力43%削減に貢献「MORI WORKING LAB」
  2. 森ビルの節電対応
  3. 「消費エネルギーの見える化」で省エネ・節電対策
  4. 街づくりにおける省エネのトップランナーとして:六本木エネルギーサービスほか