森ビル株式会社では、昨年9月に実際の自社オフィスの一部を改装し、社員自らが実験台となってより良いオフィスのあり方を探る「MORI WORKING LAB」(以下、MWL)を開設しました。開設から約1年が経過し、消費電力の大幅削減や、スタッフのコミュニケーション活性化などの成果が得られています。第1フェーズの結果ならびに次なる取り組みについてご報告します。

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■ 第1フェーズ:消費電力の大幅削減、ワーカーのコミュニケーション活性化を実現
(1)照度調整やレイアウトの工夫などで消費電力43%削減
・執務室内照明の照度を従来の半分(700Lx ⇒ 350Lx)に設定
・「管理職席=窓際」の常識を覆したレイアウトで外光を取り入れ、明るさ確保
(2)フリースタイルアドレス導入によるコミュニケーションの向上
・被験者社員の75%が「以前よりコミュニケーションが向上した」と回答
・執務室内の移動量が半減、業務に集中できる環境に

【自ら実験台となり追及するワークスペースの提案に企業が注目】
・これまで(09年10月末~10年8月末)計210社840名が見学
・建材受注やオフィスレイアウトの導入にもつながる

■ 第2フェーズ:さらなる「生産性の向上」に向けて(年内実施予定)
テーマ1.組織としての生産性の向上
テーマ2.健康と環境
テーマ3.新しいワークスペースの実験

第1フェーズ:消費電力の大幅削減、ワーカーのコミュニケーション活性化を実現

(1)照度調整やレイアウトの工夫で消費電力を43%※削減!
「紙の資料で仕事をしていた時代と違い、パソコンでの作業が大部分を占める現代のオフィスにおいて、700Lxもの照度が必要だろうか...?」
この疑問から、MWLでは従来700Lxで設定される執務室内の照度を半分の350Lxに設定。
また、窓際に配置されることが多い管理職席をコア側に移動し、窓際をオープンな打合せスペースにするなどのレイアウト変更を実施。これにより、管理職のパソコンやデスクに差し込む外光を遮るためのブラインドを開け放ち、外光を有効活用することで、照明照度を半減させたにもかかわらず、日中は600Lxを超える照度を確保できました。
また、併せて実施した「自覚症調べ※1」では「照度が低いほうが目の疲れが軽減する」との回答も得られています。

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(2)フリースタイルアドレス導入によるコミュニケーションの向上
【75%の社員がコミュニケーション向上を実感
「フリースタイルアドレス」の導入により、被験者となった社員の75%が「以前のオフィスに比べコミュニケーションがよくなった」と回答。また、「違うグループの話題が耳に入るようになった」「気軽に打合せを行う機会が増えた」など、組織内の情報共有を促す効果が認められました。その他、「整理整頓が徹底されてよい」「気分転換になる」とのメリットも挙げられています。

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【自ら実験台となり追及するワークスペースの提案に企業が注目
モデルルームとは異なり、既存オフィスで社員自らが被験者となり実験を行うMWLの取り組みに興味を持つ企業が多く、見学を通じてオリジナル建材の受注や、オフィスプランの提案依頼に結び付き始めています。

計210社840名がMWLを見学(09年10月末~10年8月末)

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【建材受注
ユーザーに近い運営管理者としてのノウハウを生かし開発した新しいオフィス建材。
以下2つの製品は特に人気の製品です。

調音パネル:取り付け簡単!残響が少ない快適な会議室を実現
室内の残響音をカットする調音パネル「エコーリダクションパネル」。絵画を飾る感覚で簡単に取り付けることができるのが特徴、会議室内の反響音を気にする企業から引き合いがあります。残響時間調査※3によると、本パネルの設置により残響時間が1kHzで0.6秒から0.4秒まで短くなることを確認できました。

昇降デスク:足のむくみ軽減・腰痛改善の効果
足のむくみや腰痛改善の効果が見られた「フリースタイルデスク」。手動で簡単に高さ調整ができるため、こまめに姿勢を変えることができます。実際に利用者の足のむくみが軽減するという結果が認められているほか、利用者からは腰の痛みが改善したという声もあがっています。

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エコーリダクションパネル

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フリースタイルデスク

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第2フェーズ:さらなる「生産性の向上」に向けて

第2フェーズ(年内スタート予定)では、テーマを『組織の生産性を高めるオフィスの追求』に設定。第1フェーズで得られた結果を活かし、「チーム単位での座席選択方式」や「生体リズムを考慮した照明の導入」などにより、組織の生産性向上を図る理想のオフィスをさらに追求していきます。発表内容は検討段階のもので、今後変更になる場合がございます。

テーマ1.組織としての生産性の向上
テーマ2.健康と環境
テーマ3.新しいワークスペースの実験

第2フェーズの詳細は年内に発表予定(メディアの皆様向け見学会も実施予定です)

MORI WORKING LAB 効果検証調査 調査要項
調査期間:2009/7/15~2010/07/31
調査対象:森ビル建物環境開発事業部 社員(110名)
調査方法:
・快適性調査(アンケート調査・生理測定・環境測定) 
・日本オフィス学会 オフィス生産性評価指数OPIアンケート
・社内アンケート調査
・エネルギー使用量調査
調査協力:九州大学大学院 芸術工学研究院 安河内研究室、松岡総合研究所

※1 自覚症調べ:改修の前後で出勤時、昼食前後、退勤時の計4回、執務空間で感じる自覚症状をヒアリング。サンプル数18名。九州大学大学院芸術工学研究院 安河内研究室調べ。
※2 活動量変化:改修前後にそれぞれ3日間、出勤時から退勤時までアクチウォッチ(照度・行動量計測)とカロリーメーター(運動強度計測)を被験者に着用し、活動量、運動強度を調査。サンプル数10名。九州大学大学院芸術工学研究院 安河内研究室調べ。
※3 残響時間調査:23.7㎡の会議室に調音パネル10枚設置し計測。ヤマハサウンドテクノロジー開発センター調べ。