森ビル株式会社

耐震構造

地震や災害時に逃げ出す街ではなく、「逃げ込める街」へ。六本木ヒルズでは災害に強い街づくりのために、様々な技術が採用しています。特に超高層の建築物に関しては、耐震性を高めるために、免震・制振などの技術を取り入れています。

1.粘性壁

六本木ヒルズレジデンスB棟・C棟には、粘性壁が採用されています。これは、箱状の鋼版の中に高い粘度を持つ粘性体を注入し、その中を独立した内部鋼版が動く際に生じる抵抗力で地震や風揺れを低減する仕組みです。各階の中央部に8基づつ設置されています。

2.オイルダンパー

オイルが移動するときの抵抗力で建物の揺れを吸収する仕組みのダンパー。装置に内蔵したセンサーが微小な揺れを感知して、素早くオイルの流れを制御する仕組みで、大地震時の揺れだけでなく、中小規模の地震や風による揺れも低減する働きがあります。森タワーでは、オイルダンパーを192台設置しており、卓越した耐震機能を誇ります。

3.グリーンマスダンパー

建物主体と積層ゴム(通常、免震構造に用いられるものと同じ)により絶縁された屋上緑化部分を大きく揺らす振り子の効果を利用することで、その層間に配されたダンパー(制震装置)が地震エネルギーを吸収することによって建物主体への負担を軽くするもの。六本木ヒルズけやき坂コンプレックスに採用しています。

4.CFT柱(Concrete Filled steel Tube)

建物の骨組みとなる柱において、鉄管の内部に高強度コンクリートを充填したものです。従来工法よりも耐力、変形能力に優れた柱で、森タワー、グランド ハイアット 東京、六本木ヒルズレジデンスB棟・C棟、ハリウッドビューティプラザで採用しています。

災害に強い街づくりという命題に対し、構造設計面からどのようにアプローチするかは我々にとって大きなテーマでした。
オフィス・レジデンス・ホテル・放送センター・シネコンなど、建物の用途は多岐に渡りますが、これらに共通するコンセプトを考えた場合、建築基準法によって定められる人命確保に主眼を置いた耐震性では不十分と考えました。
阪神大震災の教訓から、大地震時においても柱・梁フレームに部材の損傷はなく、被災後も建物機能が維持され継続使用できることとしました。また資産価値保全の観点から、什器類の転倒防止を目的として、建物の変形や揺れの勢いを抑えることとしました。さらに、中小地震時や強風時に生じる不快な揺れを低減し、高い居住性を確保する必要があると考えました。以上を踏まえた具体的な数値目標(=クライテリア)を表1、2に示します。
このクライテリアを確保するため、各棟毎に綿密な検討を行い制振・免震構造を採用することとし、それぞれ最適なディバイスを決定しました。実際の施工状況と併せまとめたものを表3に示します。施工時の写真からわかるように、ディバイスは平面計画上影響の少ない壁面内部または免震層に配置しています。
設計面での配慮として最も特徴的な項目の一つに、検討時に用いた地震波があります。(財)日本建築センターによる評価で一般的に指導される4波(ELCENTRO、TAFT、HACHINOHE、TOKYO101)以外に長周期成分の安全性を検討するため、BCJ-L2波およびART WAVE(作成:日建設計)を用い、動的解析を行っています。また各棟共、CFT柱や高強度コンクリートなどの高度な建築材料・工法を用いていますので、施工者と綿密な打合せの上、施工監理を慎重に行いました。
再開発で各棟が同時に建築されることにより、最新の知見に基づいた設計がなされ十分な耐震性を持つことは、街区全体の耐震安全性がー様に向上したことにつながります。この点も再開発の持つ大きな意義の一つです。

耐震構造一覧表
耐震構造一覧表

省エネルギー・省資源

地球温暖化への影響や開発地周辺の既存インフラ施設に対する影響を最小限に抑えるため、地域全体での環境性の向上や、省エネルギーシステムの導入に積極的に取り組みました。

1.コージェネレーション

六本木ヒルズでは大規模なガスエンジンによる発電とその排熱を利用した地域冷暖房プラントを設置、省エネ性と環境性に優れた高効率システムを構築しました。
このコージェネレーションシステムの採用により、商用電力を使用して個別空調を行った場合に比べて、約20%のエネルギー削減が可能となり、CO2やNOxの排出量も大幅に削減できます。森ビルは、東京ガスとの共同出資により六本木エネルギーサービス株式会社を設立し、電気と熱の供給事業を行っています。

1.エネルギー供給事業の概要

1)特定電気事業と熱供給事業
特定電気事業は、平成7年(1995)の電気事業法改正により創設された電気事業であり、一般電気事業者以外の事業者が特定の建物に対し、電気を供給する事業です。
六本木ヒルズではこの電気供給形態を採用しており、供給先の電力需要に応ずるガスエンジン発電設備を設置し、発電した電気を自ら保有する配電設備で各建物に供給しています。また、発電時の排熱を最大限に活用するコージェネレーション(熱電供給)システムを採用し、熱供給事業では、冷水と蒸気の熱製造を行い、配管を通じて各建物に熱を供給しています。

  • 2)電気と熱の供給先
  • 電気:森タワー、ハリウッドビューティプラザ・メトロハット、グランド ハイアット 東京、けやき坂コンプレックス、けやき坂テラス、レジデンス4棟
  • 熱:上記の供給先建物およびテレビ朝日、ゲートタワー

3)会社概要
当再開発地区で特定電気事業および熱供給事業を行う事業会社として、平成12年(2000)8月に森ピルと東京ガスの出資により「六本木エネルギーサービス」を設立しました。

2.設備概要

電気供給施設と熱供給施設を森タワーの地下階に併設し、各棟へは専用道内に布設した配電線、地域導管により電気および熱供給を行っています。
この熱電併給システムは、最大電力出力28,750kW、最大冷房能力220GJ/hと大規模なもので、特定電気事業としては都市部において本格的に実施される先駆的なものであると受け止めています。(注:特定電気事業は、2016年4月に特定送配電事業に名称変更しました)

設備概要
設備概要

2.中水道システム

六本木ヒルズ森タワーの地下5階に地区中水処理施設を設置しました。中水処理施設の中水製造能力は、約1,000m³/日におよび、トイレ洗浄水として使用しています。上水供給の節水効果は約30%になります。

3.雨水利用システム

六本木ヒルズでは地区全体で雨水貯留槽を13カ所設置し、そのほか道路雨水浸透施設、敷地内浸透施設により雨水流出抑制を図っております。

スーパーダブルデッキエレベーター

六本木ヒルズ森タワーに導入しています。森タワーの「スーパーダブルデッキエレベーター」では、2つのかごの連結部分に最大2m伸縮するパンタグラフを導入し、異なる階高に対応することが可能になりました。なお、この世界初のパンタグラフ構造は日本オーチス・エレベータと森ビルとの共同特許となっています。