【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、"アイディアが生まれる街"六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽 引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。

震災後、企業のBCPを支援したICTソリューション

今回の震災を受け、早速、東京の企業の意識にも変化が生じた。震災前後で、事業継続計画(BCP)に「従業員の帰宅困難者対応(43%→75%)」「通信の確保(53%→63%)」「入居ビル選定基準(26%→32%)」等を盛り込む企業が大きく増えており、今回の震災の教訓を踏まえた検討が始まっている(※)ことがわかる。
震災当日、いざという時に携帯電話等の通信手段が機能せず、通信の確保の重要性を我々は身をもって体験した。情報通信基盤は企業の事業継続においても、重要なライフラインであり、被災地企業の業務再開に向けても迅速な支援が求められた。

ICT(Information and Communication Technology)企業として、素早い支援対応策を打ち出した企業のひとつに三井情報株式会社がある。
例えば、停電時の通信機器の復旧手順周知や、同社が提供する製品の保守・サポートの特別プログラムといった顧客向けの支援のほか、広く被災地企業の支援を目的とした様々なプログラムも用意された。電話での問合せに最低限の機材で対応できるクラウド型コンタクトセンターの無償提供や、サーバ、ネットワーク機器の運用・管理を行うデータセンターのラックを無償で貸し出すなどした。
「ICT事業を行う企業としての使命であり、当社の社会的責任だ」と下牧社長は言うが、いずれの対策も発表から間をおかず問合せが相次ぎ、ニーズに合致した支援だったことがわかる。
災害をはじめとした多様なリスクに備えるため、バックアップ体制の構築を喫緊の経営課題とする企業の動きも見られる。「海外も含めデータセンターの分散が加速するなど、グローバルな視野をもってICTソリューションを活用する動きが急加速しています」と下牧社長も感じている。

※詳細は「東日本大震災後のオフィスニーズとBCPに関する意識調査」(2011年6月27日 森ビル株式会社)

省エネ施策を推進する環境オフィス

また、今回の震災では、電力需給の逼迫も大きな問題となった。節電努力により今夏の大規模停電は回避されたが、目標値を達成するための合理的な節電施策は、産業界が新たに直面した課題でもあった。
「節電というと、電灯や機器のスイッチをパチパチと落とすイメージが強いですが、ICTを活用すれば簡単で効果的な省エネを実現できます」と下牧社長は説く。
三井情報が開発したクラウド型省エネルギーマネジメントシステム「GeM2(ジェムツー)」では、建物の窓の位置や機器の配置などによる明るさや室温のムラをセンサーでタイムリーに把握しながら、空調を遠隔から自動制御することで無駄なエネルギー消費を抑制し、照明や空調をきめ細かに調整する。「ある家電量販店チェーンでは、年間で従来比2~3割程度の節電を果たしました」。
自社が入居する愛宕グリーンヒルズMORIタワーにも導入し、既存の中央監視装置と連携させながら、設備投資を抑え、空調エネルギー6~8%の削減を実現。このシステムのきめ細かな制御のノウハウが愛宕グリーンヒルズMORIタワー全体の省エネ性能と相乗効果をもたらしている。
また、愛宕グリーンヒルズMORIタワーでは、入居するテナント企業のエネルギー使用量を可視化する新サービス「エネルギーWEBシステム」も5月より先行導入され、「GeM2」とともに入居テナント企業の省エネ施策をオフィス全体で推進できる環境が整備されている。
環境への意識は産業界全体で高まっているが、具体的な施策については、実際の効果測定が難しいという実情もあり、根性論ではなく、合理的な省エネ施策を取り入れたいという企業のニーズは高い。こうした声に総合的に応えられる"環境オフィス"というあり方は、今後ますます重要になるだろう。

技術革新によりICTは新たな可能性を広げている。大震災は計り知れない損害を社会、経済にもたらした一方、復興に伴って新たな社会システムが更新される予感もある。この中でICTの果たす役割は、ますます大きくなりそうだ。

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愛宕グリーンヒルズMORIタワー

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オフィスエントランス

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エネルギーWEBシステム(イメージ)

三井情報株式会社:http://www.mki.co.jp/
愛宕グリーンヒルズMORIタワー:https://www.mori.co.jp/projects/atago/

ヒルズライフ49号では、緑豊かで伝統的な寺院などもある愛宕グリーンヒルズの環境について語られています。ぜひそちらもご覧下さい。