2月17日(木)、森美術館の運営や国際的な活動についてアドバイスする、森美術館インターナショナル・アドバイザリー・コミッティー(IAC)のメンバー六本木に集合しました。IACのメンバーには、ニューヨーク近代美術館のラウリィ館長、テートのセロータ館長など、世界でも全員が顔をそろえることが希なビッグネームが、名を連ねています。
今回は、そのIACのボードミーティングと、彼らをパネリストに迎えてのシンポジウムが開催され、欧米やアジアの著名美術館長等が一堂に会しました。

このスペシャル・シンポジウム、「いま、世界はアジア現代美術にどう向き合っているのか?」では、約450名の参加者が集まり、欧米の美術館ではアジアの現代美術がどのような位置づけにあるのか、また中国や日本の専門家たちは、アジアの現代美術にどう対峙しているのか、その振興には何ができるのかを、3時間に渡り、現状報告と議論を行いました。

シンポジウムを終えた南條史生館長は、TBSのインタビューに答えて、「欧米の著名美術館などがアジアの現代美術を重要視していることは確かだが、具体的な取り組みや手法については、まだ模索段階にあるとの印象を受けた」と語りました。
まさしく美術の世界でも、アジアは大切との認識は共有しているものの、例えば様々な美術館が同じように評価の高いアジアのアーティストの作品を蒐集することで生じるコレクションの均質化や、蒐集する作品を戦略的に決めるのか、或いはキュレーターのネットワークなどに基づいて考えるのかといった方針の問題な ど、多くのプレイヤーが試行錯誤している状態です。

開館8年目を迎える森美術館は、「展覧会を見せるだけでなく、シンポジウムやディスカッションなど、幅広い活動で、大変良い成功例である」(ニコラス・セロータ テート館長)との評価を得ていますが、このような状況の中で、現代美術におけるアジアの拠点となるべく、展覧会に限らず、今回のシンポジウムのような活動も続けています。
尚、今回のシンポジウムはUSTREAMでバイリンガル中継し、1,500名を超える視聴者があり、Twitter経由で登壇者へ質問も寄せられました。

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450名がタワーホールを埋め尽くす

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熱心に耳を傾ける参加者

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シンポジウムに向かう登壇者たち

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昨年のアートナイトの様子

 

パネリストの言葉から

グレン・ラウリィ(ニューヨーク近代美術館館長)
学際的な仕事が増えているのは美術も同じ。MoMAでは、C-map(Contemporary and Modern Art Perspectives)という研究グループを組織し、例えば、MoMAのキュレーターと世界中の仲間たちが、協同で日本を含めたアジア全体の現代美術を研究している。また、現在ではコレクション全体の約15%がアジアの作品である。

アルフレッド・パクマン(ポンピドゥー・センター国立近代美術館館長)
当時としては極めて斬新な、非欧米圏の美術を、西洋の現代美術と全く等価なものとして扱った「大地の魔術師たち」(1989年)を開催した同館では、欧州や北米が文化の発祥地という概念を捨て去り、国際的な視点で、モスクワ、ニューヨーク、東京など都市に関する展覧会や、森美術館でも開催した「アフリカリミックス」展などを企画している。

ニコラス・セロータ(テート館長)
アジアの現代美術作品の蒐集は2000年にテートモダンが完成してからはじめている。コレクションも欧米中心から随分と変わり、アジア太平洋地域では、中国、日本、韓国に関心は集中している。現在は森美術館でも個展を開催したアイ・ウェイウェイを紹介している。またポンピドゥー・センターと共同で大規模な草間彌生展を計画している。

ウド・キッテルマン(ベルリン国立美術館館長)
ベルリンの国立美術館群では、6つの美術館で19世紀から現在までの美術を所蔵している。芸術の発展は、政治社会的な変化とも深い相関関係にあり、1861年開設当初はドイツ語圏の作品のみを蒐集していたが、その後、フランスなどの作品も含まれ、現在ではアジアなども含まれているが、従来所蔵している作品との親和性や調和を考えながら蒐集している。

アートエリアとして盛り上がる街・六本木

当社では2003年に六本木ヒルズ 森美術館をオープンして以降、六本木エリアを“文化都心”にすべく、様々な文化・芸術の取組みを推進して参りました。それまで当エリアは美術館もなく、文化色が希薄でしたが、今ではアート目的の来街者数が芸術の街・上野に迫る程になり、文化・芸術の街として新たな賑わいを見せています。

●六本木エリアのアート関連来街者数:420万人
(六本木エリア美術館来館者数:350万人 + オールナイト型アートイベント「六本木アートナイト」来街者数:70万人)
●上野エリアの美術館・博物館来館者数:550万人

また、今年も3月26日(土)~27日(日)にかけて、第3回目となる「六本木アートナイト2011」を開催します。
日本唯一のオールナイト型アートイベントであり、昨年は70万人が参加。この日、六本木エリアはアートに染まり、夜を徹して楽しむ人々で大いに賑わいます。

今後も、当エリアにおけるアートコンテンツの更なる拡充を図り、世界中から人々が集う魅力ある街づくりに取り組んで参ります。

森美術館:http://www.mori.art.museum/