【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、“アイディアが生まれる街”六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽 引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。
日本経済再興に向けた「開国」
97年よりアークヒルズにオフィスを構える世界的な経営コンサルティングファームであるA.T. カーニー。日本が国を挙げて経済再生と成長戦略を模索するなか、同社はこの春に経済産業省の「産業構造ビジョン2010」策定において、複数のテーマで支援を行った。梅澤高明氏(同社日本代表)が以前から提唱してきた「文化産業立国」もそのうちのひとつだ。
自動車や電機など、日本の従来のグローバル産業は、高機能、高品質、高いコストパフォーマンスなどの“機能価値”を売り物とする「文明産業」であった。しかし、機能価値における新興国企業の追い上げは早く、この軸での優位性だけで競争を勝ち抜くことは難しい。
では、今後、日本が世界に訴求できるものは何か。
梅澤氏は日本のファッション、食、メディア・コンテンツ(アニメ、映画等)などの「文化産業」に着目する。これらの文化産業が生み出す“感性価値”が世界の人々を惹きつけると言う。製品・作品の持つ世界観やデザイン、その背後にあるライフスタイルなど、人々の感性に働きかける魅力こそが、日本の「グローバル産業」育成の新たな核となると考えている。
しかし、すでに世界からも高く評価され、相当の訴求力があるこうした文化資産についても、日本人は海外で評価されて初めて「どうやら日本のレベルは高いようだ」と気づくことが多い。そこに問題がありそうだ。
この傾向は、「日本人にグローバルな視点が育っていない」ことに起因している。自分たちの持つものが世界でどの程度通用するのか、外の世界を知らなければその価値に気づかない。これに対する梅澤氏の提案は「人の開国」だ。日本人が積極的に海外に出て、見聞を広めることももちろん重要だが、一方で海外から日本に来る人々、特に労働力となる人々に対して門戸を広く開放することで、人材、情報、価値観等の交流を促し、内側からのグローバル化と健全な競争を促すべきだと指摘する。
加速化するグローバル競争の中で、気づけば日本が取り残された孤島になっていたということのないよう、梅澤氏は警鐘を鳴らす。
コンサルティングファームにふさわしいオフィススペースとは
A.T. カーニーは今年アーク森ビルのオフィスの全面リニューアルを実施。その際、社内でプロジェクトチームを立ち上げ、コンサルティング会社にふさわしいオフィスのあり方について検討を重ねたという。コンセプトのキーワードとなったのは「コミュニケーションとセキュリティ」。
コンサルタントがクライアント企業に常駐することの多い同社では、自社オフィスに戻ったときの社員間のコミュニケーションが課題であった。かつては個々のブースがパーティションで区切られ、コミュニケーション上の弊害となっていたこともあったが、今回はそのパーティションを取り除いた。全体を見通せる開放的な空間とし、且つフリーアドレススタイルとしたことで、個人間、およびプロジェクト別に編成されるチーム内でのコミュニケーションが活発になったという。
一方、クライアントの機密情報を取り扱う上で、求められるセキュリティレベルの高さは10年前とでは比較にならない。クリーンデスクの徹底しやすい環境、資料・情報の機密性のレベルに応じた管理ができるセキュリティルームの増設など、セキュリティ環境の強化も行った。
A.T. カーニーはコミュニケーションエリア、セキュリティエリアとをきちんとゾーニングし、合理的なオフィススペースを構築、近年ますます重要性が高まるこの2つの価値の両立に成功している。
アークヒルズで働くということ
学生時代にバンド活動に打ち込んだ梅澤氏の、現在の趣味はオーケストラ鑑賞。「世界中の多くのコンサートホールに足を運びましたが、サントリーホー ルの音響は国内ではおそらく一番。海外でも、ここより“良く鳴る”ホールは見たことがありません」と言うほどサントリーホールを高く評価する。オフィスの エレベーターを降りて外に出ればそこには世界最高水準の音楽ホールがあるという環境。多忙な仕事の合間に時間をつくってはサントリーホールに足を運ぶ梅澤氏だが、こうしたワークライフバランスを可能にするのも、さまざまな施設が集まる街・アークヒルズだからこそ。
また、特にビジネスマンにとって、会食の場所の選定は頭を悩ませるものだが、梅澤氏はアークヒルズクラブを会食、セミナー等の場として頻繁に利用してい る。多いときには週5回というからお気に入りであることは間違いない。オフィスの最上階にクライアントを招待できる会員制クラブがあるということも、アー クヒルズにオフィスを構えるメリットのひとつ。
こうした複合的なコンパクトシティであるアークヒルズの持つ全体のバランス感、信頼感がA.T. カーニーが長くアークヒルズにオフィスを構える要因となっているようだ。

コーポレートカラーのガーネットレッドを基調としたラウンジ

窓側に並んだ気持ちのよいフリーアドレススペース
A.T. カーニー株式会社:http://www.atkearney.co.jp/
ヒルズライフ 44号では、同社の日本代表 梅澤氏が、日本の経済再生策を考える上で重要な産業の「生態系発想」について語られています。ぜひこちらもご覧下さい。