【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、“アイディアが生まれる街”六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。
人口500万人の国から生まれたグローバル企業
とある企業の役員会議にて。目の前に座った社長はインド人、その横にずらりと並ぶ開発系のトップはフランス人やドイツ人、ファイナンス系のトップはイタリア人、セールス系、人事系のトップはドイツ人、PR系のトップはイギリス人、サービス系のトップはインド人…こんな風景が想像できるだろうか。
ノキア シーメンス ネットワークス。国境の枠を越え、優れた技術力をもってグローバルに製品を提供している同社では、こうした風景は珍しくない。世界約6万人の社員を抱え、150カ国に600社以上の顧客を抱える同社は、ノキア(フィンランド拠点)の通信事業を行っていたノキア ネットワークスとシーメンス(ドイツ拠点)のネットワーク事業を統合し誕生した企業で、携帯電話の基地局に代表される通信インフラを提供している。基地局とは、携帯電話で通話・通信を行う際に電波を受発信するアンテナと関連する機械類をおさめたもの。同社の製造能力は、日本全体の需要も瞬時にまかなえるほど。世界最大規模の通信事業インフラ会社だ。
人口500万人という小国フィンランドを拠点とする企業の強さのヒミツはどこにあるのか。それは同社が誇る優れた技術力と、フィンランドならではの国民性にあった。
活躍の舞台は世界のオフィス
自身も日系企業で長く技術者として勤めた経験をもつ同社アジア太平洋地区リーダーシップチームメンバー 小津泰史氏曰く「技術者は1カ所でじっくり仕事をしたいという人材が多い」というが、世界各地でサービスを展開する同社では、日本の企業ではなかなか経験できない、技術者としてのキャリアアップを積むことができる。社内のイントラネット上に各国オフィスで必要な人材を募集するジョブ・マーケットが開設されていて、社員自らが情報収集し、直接アプライすることができる仕組みは、「どこでも自分が仕事をしたいと思う場所に行ってキャリアアップをしてほしい」という同社の想いが反映されたものだ。
技術者として世界に羽ばたきたいという人が勤めるべき環境が整っており、また、同社が誇る技術を世界レベルで知ることができることも、技術者にとって大きなメリットといえるだろう。社員がスムーズに世界のオフィスを渡り歩けるよう、仕事のプロセスを説明した「Mode of Operation(業務規定)」が非常に明確に定められており、入社時にはそれをかなり厳しく叩き込まれる。そのおかげで世界各国どこに行っても、仕事をすすめるうえで困ることはないというのも、同社のユニークなワークスタイルだ。

廊下の壁に沿って英字のカラフルなサインが並ぶ

窓際に設置された会議室には
気持ちのよい太陽光が注ぐ
マーケットは常に「グローバル」
常に世界を意識した同社のビジネス展開は、同社が本社をかまえるフィンランドの風土に拠るところが大きい。500万人という人口は、北海道とほぼ同じ規模であり、国土は日本の約0.9倍。国内だけをビジネスターゲットにしていては、マーケットとして成立しない。だから、同社の社員が「マーケット」と口にするとき、それは国内、海外の両マーケットを指すという。国内、海外を分けて考える通信業界の常識を考えると異例のことだが、「何かやる=グローバルに展開する」というその発想こそが、同社の成長の原点だ。
同社が製造する基地局は、重さ25kg程度でランドセル大、防塵、防水、防塩で、振動にも強く持ち運びがしやすい。この競争力の高い製品が生まれた背景には、成長著しいインドなどのような新興国における携帯電話加入者の急増がある。毎月1,500万人が新たに携帯電話に加入していく状況では、基地局の設置も急ピッチで行わなければならず、そのためには誰でも簡易に設置できることや、インフラが整っておらずボートに乗せて基地局を運ばなければならないような場所にも問題なく運搬できることが求められる。そこで前述のような使い勝手のよい製品が開発され、同社のグローバルな発想や、それにもとづく世界各地のネットワークを活用して、技術の共有が図られた。その結果が、世界を相手にした同社のビジネス展開へとつながっていく。
こうした企業風土においては、年齢も人種も関係なく、多様な人間が社員として集まってくる。会社としては、その多様な社員ひとりひとりをよく見て話を聞き、人事戦略を考える必要があるわけだが、その姿勢はお客様に対しても表れているという。本社のトップ自らが年間150日程度出張して、世界中のお客様に会い、話を聞く。そこからお客様のニーズに応える新たな技術が生まれることもある。「お客様の話を聞く」。当たり前のようだが、世界のマーケットをまたにかける同社ならではの強みのひとつだ。
日本は技術の先端拠点
優れた技術力を誇る同社だが、中でも日本は通信技術において世界の最先端を走る存在だという。まずは日本向けの新たな技術、製品を開発し、それを世界に持っていくというのが今の同社のスタイル。つまりは、同社にいれば、世界の最先端技術にふれることができるうえ、そこで培った技術をもってすれば、世界のどこに行っても活躍できるということだ。
それはグローバルな発想に支えられた同社だからこそ可能になること。「日本の技術者はもっと活躍できるはず」。そのための舞台は、ここ、六本木ヒルズに用意されている。
ノキア シーメンス ネットワークス株式会社:http://w3.nokiasiemensnetworks.com/jp/