【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、“アイディアが生まれる街”六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。
世界ナンバーワンの"The Chemical Company"
2008年の売上高は約8兆3700万円。全世界で約9万7000人の社員を抱え、およそ330の生産拠点を擁する。扱う製品は約8,000種類以上。数字の羅列だけでも、その規模を窺い知ることのできるこの企業こそが、1865年に設立された"The Chemical Company"を標語に掲げる世界最大の化学メーカー、「BASF(ビーエーエスエフ)」だ。
その規模とは裏腹に聞き慣れない企業名だと思う方もいるかもしれないが、それもそのはず。BASFの事業領域は、化学品、プラスチック、高機能製品、機能性化学品、農業関連製品、石油・ガスと、川上から川下まで幅広く網羅しているが、それらはすべて最終製品の「原材料」。ゆえに消費者の目にBASFの名前が触れることはほとんどないが、例えば建物を建てるためのセメントや、日焼け止めなど、私たちの生活に不可欠なものの多くに、BASFの製品が採用されている。
そのBASFグループの日本拠点が、2009年8月に六本木ヒルズに移転した。BASFが日本で事業を開始したのは1949年、日本との結びつきが始まったのは100年も前に遡る。BASFが世界で初めて合成に成功した染料、インディゴ・ピュアを通じて日本の織物界との交流がスタートしたのがきっかけで、開発間もないインディゴ染料の美しい色合いが、日本の「かすり」染めに使われた。
現在日本には、BASFジャパンを含め8社の関係会社があり、今回の移転では5社が事業の効率化を目的に、六本木ヒルズ森タワーに集約された(うち1社は移転後、BASFジャパンに統合)。
「ワンカントリー・ワンカンパニー」
BASFでは、グローバルコンセプトとして「ワンカントリー・ワンカンパニー」という言葉を掲げている。全世界で事業を展開するBASFが、それぞれの国にあるグループ会社を集約し、ひとつのオフィスにまとめていこうという考え方で、日本でもその取り組み強化の一環として、都内に分散していた5社の東京本社、総勢およそ550人が六本木ヒルズに集まった。六本木ヒルズへの移転は、このコンセプトの具現化であり、日本のBASF全体でBASF社員としての意識、連帯感を持つことができたという点で、非常に意義があったという。移転前に存在していたそれぞれのオフィス間を移動する時間的なロスも解消した。これまで戦略的に実施してきた事業買収についても、このコンセプトをもとに一層の効率化を推進する方針だ。
また、オフィスエリアにおいても、広いフロアを生かして十分にオープンスペースを確保し、社員間のコミュニケーションが格段に取りやすくなったことも、移転により得られたメリットのひとつである。

オフィスエントランスにはBASFの材料を使って
つくられた様々な製品が並べられている

窓際に設けられた打ち合わせスペース

「ワンカントリー・ワンカンパニー」を祈願して
「一国一社」だるまに目を入れる成尾社長
リクルート活動にも好影響
六本木ヒルズへの移転は、社外のステークホルダーからの反応にも、好影響を及ぼした。「六本木ヒルズに一度行ってみよう」と、新オフィスの見学を兼ねて訪ねてくるお客様が増え、さらにリクルート活動にもさらなるプラス効果が期待されているという。BASFに対する学生の関心は年々増加傾向にあり、2010年の「プレエントリー」数は、2007年と比較して倍以上。今年、若者に人気の六本木ヒルズに移転したことで、学生からの人気がますます高まるのではないかと期待している。
六本木ヒルズ=革新的な技術へのゲート
名実ともに世界最大の化学メーカーであるBASFでは、全世界で多くの社員が研究開発に従事し、革新的な素材や用途の開発に取り組んでいる。特に日本は、自動車・電機メーカーなど世界市場で活躍し、世界技術を牽引する企業が多くある重要な市場。BASFにとって、日本は新たな用途を開拓する重要な役割を担っている。今後も世界をリードし続ける化学メーカーとして、六本木ヒルズは、革新的な技術へのゲートとなり得るだろう。
BASFジャパン:http://www.japan.basf.com/