【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、“アイディアが生まれる街”六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽 引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。
「法律事務所らしくない」オフィス
あ たたかな光や色合いがリラックスした雰囲気を感じさせるエントランススペース。法律事務所というと、無機質なダークトーンのオフィスを連想しがちだが、 2003年より六本木ヒルズ森タワーにオフィスをかまえるTMI総合法律事務所のオフィスは、そのイメージをいい意味で裏切ってくれる上質かつアットホー ムな空間だ。エントランススペースを抜けると、丸みのある建物の形状を生かしたカーブがかった廊下が、やわらかいイメージをつくり出している。人と人との つながりを大切にし、お客様が何でも気軽に相談できる法律事務所を目指したという同事務所の考えが伝わってくる。
事務所の規模拡大にあわせ古巣の虎ノ門からの移転を検討したときにも、「なにか新しいことに挑戦したい」という想いから、六本木ヒルズを選んだ。「法律事務所らしくない」オフィス空間づくりも、その新しさのひとつだ。

エントランススペース

執務室内にある作業スペース
ここでコミュニケーションが生まれる

ミーティングゾーンへ続くラウンドシェイプの廊下

東京の街が一望できるコミュニケーションスペース
1番よい眺望をお客様に
六 本木ヒルズ森タワーの23階・24階の2フロアにまたがる同事務所のオフィスは、大きく会議スペースと執務スペースに分かれる。大きなフロアの窓際に並ぶ ように配置された会議室からは、東京の街並みを一望することができ、訪れたお客様もまずはその景色を堪能するという。そこからお客様との会話が始まること も多くあり、円滑なコミュニケーションにも一役買っている。様々な案件に対応できるよう、規模、雰囲気ともにバラエティ豊かな会議室が顔を揃える。
命題はコミュニケーション
ど こにもないユニークな法律事務所を目指す同事務所が、創立以来大切にしているのがオフィス内のコミュニケーションだ。今年の10月で20年目を迎える同事 務所では、立ち上げ当時40名ほどだった陣容が今では約500名にも上り、急激な成長を遂げてきた。それでも、規模が拡大すればするほどface to faceのコミュニケーションを重要視し、オフィスの至るところにコミュニケーションを生み出すための工夫がされている。
六本木ヒルズに移転した当時は、23Fのワンフロアのみに入居していた同事務所。そのころは、窓際の気持ちのよい空間をできる限り開放しようという趣旨の もと、建物のコア側=フロアの中央にパートナー(弁護士・弁理士)の個室を配置し、スタッフの執務スペースが窓際にくるように工夫した。通常であれば窓際 の眺望のよい部分に個室を並べるであろうことを考えると、ここでも同事務所が常に新しい挑戦に取り組んでいることがうかがえるが、その後24Fへとオフィ スを拡大した際には、同事務所が命題として掲げるコミュニケーションをさらに強化することをコンセプトに掲げた。自然とコミュニケーションが生まれる、よ りオープンなスペースであるための仕掛けとして、まずは23Fでコア側に配置していた個室を、今度は逆に窓際に並べた。これにより、エレベーターホールや 手洗いに移動するときにも、必ずパートナーがアソシエイト(若手弁護士)の間を通るような動線が生まれた。日常的に自然と顔を合わせることで、自然とコ ミュニケーションが生まれ、それぞれの業務も把握しやすくなった。執務に集中する個室環境を保ちつつも、「個室が孤立にならない」ための工夫がなされてい る。さらに、同事務所では基本的にオープンドアのポリシーを持ち、必要時以外は個室のドアを開放している。パートナーとアソシエイトがそれぞれ電話で話し ている声も聞こえるような環境は、コミュニケーションの活性化だけでなく、若手の教育や明るいオフィスづくりにも役立っている。
また、窓際には個室だけでなく、仕事中のちょっとした話し合いにも使うことのできるコミュニケーションスペースを設けた。スタッフがランチを食べるのにも よく利用されるという、窓際の気持ちのよさを実感できるスペースだ。大きな窓から差し込む光は、自然とコミュニケーションを活性化させる力を持つという。
さらに、オフィス内のあちこちに設けられたコピー機や大きな作業台を並べたスペースでも、集まったスタッフ同士がコミュニケーションをとる姿がよく見られる。
壁や柱のない開放感のあるオフィスでは、個室のほかに、アソシエイトやスタッフが業務を行う「シェル」(ついたてで区切られた個人の執務スペース)がずら りと並ぶが、ここでも後ろを振り返るとすぐにコミュニケーションをとることができるように、レイアウトが工夫されている。これらのオフィスレイアウトにお ける様々な工夫は、基準階面積4,362.18 m²という、六本木ヒルズ森タワーの大きなフロアプレートを最大限に活用した好事例といえるだろう。
「TMI文化」の継承
同 事務所の工夫はこれだけではない。23Fと24Fにフロアが分かれたことでフロア間のコミュニケーションが衰退しないよう、お客様用の会議室は23Fに、 内部会議室は24Fに配置し、お互いのフロアを行き来する「用事」を敢えてつくることで、所員同士が顔を合わせる機会づくりに努めている。また、レイアウ トだけでなく、所内報を作成したり、毎週月曜の朝には所員全員が集まる朝礼を開催したり、さらには事務所の規模が拡大した今でも、1泊2日の事務所旅行が 年1回開催されている。
法的環境が大きく変わる中、今後もさらなる発展が予想されるTMI総合法律事務所。しかしながら、どれだけ規模が拡大しても、事務所内に脈々と流れる「TMI文化」とでも呼ぶべき風土は、継承されていくだろうと言えそうだ。
TMI総合法律事務所:http://www.tmi.gr.jp/