【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】は、“アイディアが生まれる街”六本木ヒルズをはじめとするヒルズが発信するライフスタイル誌「ヒルズライフ」で連載中。日本を牽 引する新鮮なアイディアを持つ企業がヒルズに集まり、ヒルズからビジネスのトレンドが生まれていることを紹介しています。
当web版では「ヒルズライフ」と連動し、【Hills' Eyes on Business ヒルズビジネス新潮流】のサイドストーリーとして皆様にお届けします。
話題の「クラウドコンピューティング」サービスを提供する成長企業
約6万社・約200万人の顧客がそのサービスを利用し、今、まさに勢いを増している成長企業がある。「ITの第3の選択肢」として注目を集める「クラウドコン ピューティング」のサービスを提供する、株式会社セールスフォース・ドットコムだ。同社の成長にあわせた拡張性や品格、オフィスとしての利便性、そして街 そのものがもつエキサイティングな環境などを理由に、2007年より六本木ヒルズにオフィスをかまえている。
インターネット上にあるコンピューターシステムを多数のユーザが共有することで、コスト面においても、またセキュリティ面においても優れたシステムをユー ザに提供する、いわゆる「所有から利用へ」という考え方が世の中に広まりつつある中で、IT業界における先鞭をつけたともいえるのが同社だ。各企業が、そ れぞれ独自のシステムを開発、保守、運用する手間を省くことで、より本来的な質の高い仕事に時間や人を割くことができる。そうしてITが企業の競争力を高 め、ひいては国の競争力向上にも貢献しているといえる。
「1/1/1モデル」による社会貢献

活動の様子 © Salesforce.com Foundation

活動の様子 © Salesforce.com Foundation

活動の様子 © Salesforce.com Foundation
そんな上昇気流の真っ只中にある同社が持つもう1つの顔。それが社会貢献活動だ。「現会長のマーク・ベニオフが、自宅の一室でセールスフォース・ドットコ ムを立ち上げたときから、当社の社会貢献活動は始まっています」そう語るのは、同社で社会貢献プログラムを担当する遠藤理恵氏。「企業の価値はビジネスの 成功だけでは計れません。その企業がビジネスを展開する地域社会はもちろん、世界に貢献していくことにこそ真の価値があります。」というベニオフ氏の言葉 どおり、同社では「1/1/1モデル」と名づけられた様々な社会貢献活動を実践している。
「1/1/1モデル」は、3つの柱からなりたっている。まずは「就業時間の1%」。同社の社員が、年に6日の「社会貢献休暇制度」を利用して、ボランティ ア活動に参加する。各社員の興味や専門性に合わせ、様々なプログラムが用意されており、日本における主な活動は、途上国の子ども用の現地語絵本の製作、障 害者授産施設の清掃、非営利団体のSalesforce CRM利用サポート、児童養護施設の子どもへのPC教育、緑化活動や清掃、野生動物保護、チャリティースポーツイベント運営、翻訳、語学講師、非営利団体 のIT支援など。前述の休暇制度を利用して、平日の業務時間中にもボランティア活動を行うことができるのが同社の大きな特徴で、2008年度の日本法人に おける社員の参加率は100%、合計2,300時間のボランティア活動が行われたという。毎年12月には、児童養護施設の子どもたちにプレゼントを送る恒 例イベントがあり、社員がサンタに扮してプレゼントを届けるなど、心温まるエピソードも数多い。
2つ目の柱は「製品の1%」。非営利団体に同社のサービスである「Salesforce CRM」を無償で提供することで、非営利団体が情報管理や業務の効率化を図り、ミッションの達成に専念できるよう支援している。実は、遠藤氏が同社に入社 するきっかけとなったのが、この「製品の1%」による支援だった。遠藤氏が以前働いていた非営利団体がSalesforce CRMを導入し、情報の一元化や効率化が格段に向上した。「なんでもアナログで行いがちな非営利団体にこのサービスをうまく取り入れられれば、すばらしい ツールになる。そう思い、自らが他の非営利団体に対してサービスをすすめる仕事にうつることに決めました」今では、世界中で5,200を超える団体が同 サービスを活用している。
3つ目の柱が「株式の1%」。財政的援助として、非営利団体の活動を資金面で支援している。非営利団体・教育機関向け助成として、年1回助成対象を決める ための公募を行い、2009年度は、現在「Salesforce CRM」を使用している非営利団体に対し、さらなる活用のための開発費を提供することとなった。また、社員向け助成として、社員によるボランティア活動を 推進するため、社員が支援する団体に対するマッチング寄付なども行っている。
広がる「1/1/1モデル」の輪
「1/1/1モデル」では、これらの3つの柱が、相互に関連しあい、相乗効果を発揮している。また、このモデルを同社のみで行うだけではなく、つきあいのあるパートナー企業と共有し、各社の専門性を生かしながら、より広く深い範囲で非営利団体を支援するための「Power of Us パートナープログラム」を展開したり、障害者の就労支援を行ったりもしている。
同社の社会貢献活動が非常にうまく機能し、社内に浸透しているのは、創業者のベニオフ氏が、本当にこの活動をコーポレート・カルチャーとして強く推奨しているからだ。新入社員や中途入社社員も、研修を通じてボランティアに参加し、同社のこうした企業風土を、身をもって体感していく。
同社が「1/1/1モデル」を始めてすぐに、Googleも同モデルを導入し、今では社会に対する非常に大きな力に発展した。「アメリカやヨーロッパに比べ、まだまだ非営利団体と企業の結びつきが弱い日本において、セールスフォース・ドットコムがその先駆者となり、できるだけ多くの方たちにこのモデルを一緒に展開していただければと思っています」
数字だけでは計ることのできない真の企業価値を有する同社。今後の日本のビジネス界において、さらに大きな存在感をあらわしていくことが期待される。
株式会社セールスフォース・ドットコム:http://www.salesforce.com/jp/
ヒルズライフ7月号では、同社の上席副社長、日本法人の代表取締役を務める宇陀栄次氏が、「クラウドコンピューティング」の魅力について語っています。ぜひそちらもご覧ください。