11月2日(日)、六本木アカデミーヒルズ 49階タワーホールにて特定非営利活動法人「失敗学会」(会長:畑村洋太郎氏)の秋の国際大会が開催されました。
事故や失敗とは、小さなものから経済的損失につながるもの、負傷を伴う大きなもの、さらに多数の死傷者を出す大規模なものまであります。「失敗学」はこういった事故や失敗発生の原因を解明し、さらに、経済的打撃を起こしたり、人命に関わったりするような事故・失敗を未然に防ぐ方策を提供する学問であり、「失敗学会」は、単に研究するだけでなく、広く社会一般に対して失敗原因の解明および防止に関する事業を行い、社会一般に寄与することを目的としています。
今回開催された秋の国際大会では、『大型人工物の事故と安全について』をテーマに、名著"To Engineer is Human"で知られるアメリカのデューク大学教授ヘンリー・ペトロスキ氏が来日し講演されました。
『橋はなぜ落ちたか』とのテーマでご講演されたヘンリー・ペトロスキー氏は、「失敗を予想していると成功に到達する。成功した設計は、いずれ失敗につながる」という設計のパラドックスについて、処女航海で沈没したタイタニック号から始まり、1800年代から様々な構造、設計の変遷を経てきた吊り橋について1940年に完成後わずか4ヶ月で崩壊したタコマ橋の例などをあげながら、お話されました。
設計のパラドックスとは、「過去の失敗に学び、失敗を避けるべくつくられたものは失敗を繰り返さないが、運良く成功した設計はその潜在的な問題点が顕在化しないまま時を経て、さらにその設計が成功例として複製、進化を遂げてしまうため、いずれ失敗に結びついてしまう」というものです。
また、畑村洋太郎会長は『原子力発電と地震』のテーマで、柏崎刈羽原発の地震被害や浜岡原発の耐振対策、さらに兵庫耐振工学研究センターにおける実物大橋脚の地震動破壊実験などについてご講演されました。
六本木アカデミーヒルズのタワーホールには、技術や安全に関心の高いたくさんの方が集まり、熱心に聴講されていました。
畑村洋太郎会長は、「事故や失敗を解明し、広く伝える活動を行っているが、最近でもエレベーターやエスカレーターなど同じような事故が起きている。安全装置に頼るのではなく、人、機械、システムの関係をきちんと考える必要がある」とお話されました。
失敗学の理念は、同じく畑村会長が代表を務める「危険学プロジェクト」につながっています。森ビルはこうした事故をなくす取組みに積極的に参画、協力していきます。
失敗学会:http://www.shippai.org/
畑村創造工学研究所:http://www.sozogaku.com/hatamura/
森ビルの「安全への取組み」

講演に際してご挨拶された畑村洋太郎会長

たくさんの方が参加されました

『橋はなぜ落ちたか』をテーマに
講演されたヘンリー・ペトロスキー氏

畑村洋太郎会長は
『原子力発電と地震』をテーマに講演されました