森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 辻慎吾)は、オフィスマーケットの需要動向を把握することを目的に、「東京23区オフィスニーズ調査」を2003年より継続的に実施しています。当調査は、主に東京23区に本社が立地する企業で資本金上位の約1万社を対象として、今後の新規賃借予定等のオフィス需要に関するアンケートを行ったものです。この度2024年調査がまとまりましたので、結果をご報告します。

新規賃借予定のある企業の約6割が「面積拡大」と回答
新規賃借理由は「立地改善」「業容・人員拡大」「設備グレード改善」など

2024年9月に実施した今回の調査では、「新規賃借予定あり」と回答した企業が25%と、この数年間は全体の約4分の1で推移。うち、「新規賃借面積拡大予定」の割合は2020年調査より4年連続で増加し、約6割(58%)が「拡大」と回答しました。

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さらに、新規賃借予定のある企業にその「理由」を尋ねたところ、1位が「立地の良いビルに移りたい」、2位が「新部署設置、業容・人員拡大」となりました。一方、2022年調査で1位であった「賃料の安いビルに移りたい」は4位となり、「働き方の変化に応じたワークプレイスの変更」を選ぶ企業は減少傾向にあります。コロナ禍直後の景況悪化や働き方の変化への対応は落ち着きつつある一方、今後の成長を見据えた積極的な投資を検討している企業が増加していることが窺えます。

また、新規賃借予定のある企業の「希望エリア」について、直近3年間(2022~2024年調査)の回答割合の平均値を見ると、「日本橋」(19%)、「丸の内」(16%)、「大手町」(15%)、「虎ノ門」(13%)、「新橋」(12%)など、大規模な再開発事業が集積するエリアが多く挙げられました。駅・道路などのインフラ整備による交通利便性の向上や、職住遊が複合するコンパクトな街への期待の大きさが現れる結果となりました。

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オフィスの役割・課題は「社内コミュニケーション・コラボレーションの強化」や「従業員のエンゲージメント向上」
約4割の企業が今後もオフィスへの投資を増加すると回答

調査時点の出社率の平均は78%で、出社率が80%以上と回答した企業の割合は前回調査時から5ポイント上昇しており、オフィスへの回帰がさらに進んでいると考えられます。そのような中、「本社オフィスの存在意義や求められる機能・役割(以下「存在意義等」)」と「オフィス環境づくりの課題(以下「課題」)」を問う設問では、存在意義等として71%、課題として42%の企業が「社内コミュニケーション・コラボレーションの強化」を選んでいます。また、課題として次いで回答割合が多いものとして「従業員のエンゲージメント向上」(存在意義等49%・課題32%)、「災害など有事における本部機能」(同38%・26%)などが挙げられました。

なお、従業員300人以上の企業に絞ると、存在意義等として86%の企業が「社内コミュニケーション・コラボレーションの強化」と回答。次いで「従業員のエンゲージメント向上」(存在意義等69%・課題47%)、「災害など有事における本部機能」(同50%・28%)、「従業員の創造性(クリエイティビティ)の誘発」(同40%・27%)、「従業員のウェルビーイング向上」(同41%・26%)などが続き、オフィス環境が従業員の生産性に与える影響やBCP機能をより重視する姿勢が見られました。

コロナ禍以降のオフィス内機能のオフィス面積に占める割合の変化については、「業務支援エリア」「オープンなミーティングスペース」「飲食・ウェルネスエリア」について「新設・面積割合増加」したという回答が「面積割合減少・廃止」を上回っており、従業員の生産性向上、コミュニケーション強化やウェルネス向上に寄与するオフィス機能の拡充が進んでいる様子が窺えます。これらのエリアについて今後も「新設・面積割合増加」するという回答が「面積割合減少・廃止」を上回っており、このようなオフィス機能の拡充が進んでいくと考えられます。

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企業による新規賃借・賃借面積拡大の意向は引き続き根強く、立地・ビルグレード改善のための新規賃借を検討する企業が増加しています。この背景として、単なる執務空間ではなく、「社内コミュニケーション・コラボレーションの強化」や「従業員のエンゲージメント向上」を実現するオフィス環境が求められていることが挙げられます。オフィス市場においては、こうした企業のニーズを満たすことのできる、多様な機能を有した良質なオフィスビルがますます求められていくものと思われます。