森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 辻慎吾)は、オフィスマーケットの需要動向を把握することを目的に、「東京23区オフィスニーズ調査」を2003年より継続的に実施しています。当調査は、主に東京23区に本社が立地する企業で資本金上位の約1万社を対象として、今後の新規賃借予定等のオフィス需要に関するアンケートを行ったものです。この度2023年調査がまとまりましたので、結果をご報告します。

2023年9月、10月に実施した今回の調査では、「新規賃借予定あり」と回答した企業が27%と前回調査から3ポイント増加。うち、「賃借面積拡大予定」の割合は2020年調査より3年連続で増加し、過半数となる55%が「拡大予定」と回答しました。

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さらに、新規賃借予定のある企業にその「理由」を尋ねたところ、「立地の良いビルに移りたい」が1位、「設備グレードの高いビルに移りたい」が2位となり、前回調査で1位であった「賃料の安いビルに移りたい」は同率2位となりました。「優秀な人材を確保するため」や「新部署設置、業容・人員拡大」なども増加傾向にあり、今後の企業成長を見据えて新規賃借を検討する企業が増加しているものと思われます。
また、新規賃借予定のある企業の「希望エリア」について、直近3年間(2021~2023年調査)の回答割合の平均値を見ると、「日本橋」(19%)、「丸の内」(16%)、「大手町」(16%)、「新橋」(13%)、「虎ノ門」(12%)など、大規模な再開発事業が集積するエリアが多く挙げられました。駅・道路などのインフラ整備による交通利便性の向上や、職住遊が複合する街の魅力向上への期待の大きさが伺える結果となりました。

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オフィス環境づくりを「投資」と捉える企業が過去最高
「従業員のエンゲージメント」「部門を越えたコミュニケーション」「アイデア創出」が課題に

オフィス環境づくりのための支出を「投資」と捉えるか、「コスト」と捉えるかを尋ねる項目では、「投資」または「どちらかといえば投資」と回答した企業が、本設問を設けた2014年の調査以降、初めて5割を超え、従業員300人以上の企業では約7割に上りました。調査時点の出社率の平均は76%で、出社率が80%以上と回答した企業の割合も前回調査時から増加傾向にあることから、引き続き、オフィスへの回帰が進むとともに、オフィス環境づくりへの意欲が高まっていることが伺えます。

従業員300人以上の企業において、「本社オフィスの存在意義や求められる機能・役割」を問う設問では、「従業員のエンゲージメント向上」「部門を越えた偶発的な出会いやコミュニケーション」「活発な議論やアイデア創出」が上位に挙がりました。また、オフィス環境づくりにおける課題として、「社内コミュニケーションやコラボレーションの強化」「従業員のエンゲージメント向上」を挙げる企業が約6割、「従業員のウェルビーイング向上」を挙げる企業が約4割となりました。

一定規模以上の企業においては、特にワークプレイスの充実への関心が高く、オフィスに期待する役割と課題も明確となっています。今後、従業員が出社したくなる魅力的なオフィスづくりや、活発なコミュニケーションやアイデア創出を促進するようなワークプレイスがますます求められていくものと思われます。

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新規賃借・賃借面積拡大の意向は引き続き根強く、大規模な再開発事業の進むエリアへの期待が高まっています。また、リモートワークでは困難な「社内コミュニケーション促進」「従業員のエンゲージメント強化」をオフィス環境づくりにおける課題と捉える企業が多く、一定規模以上の企業ではその傾向が特に顕著です。オフィス市場においては、これら新たなニーズを満たすことのできる、ハード・ソフト両面での商品力・提案力が求められていくことが予想されます。