このたび、森美術館館長の片岡真実は、昨年開催した「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」の企画において、第17回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞しました。
西洋美術振興財団賞は、公益財団法人西洋美術振興財団が最近2年間に国内の美術館で開催された西洋美術に関する展覧会等の関係者を対象に、日本における西洋美術の理解と文化交流の促進、西洋美術研究発展のため、顕著な業績があると認められる個人(学術賞)、ならびに団体(文化振興賞)を顕彰するものです。
「学術賞」は、多年の研究をもとに組織され、今後の研究促進に貢献し、学術的にも優れた展覧会の企画構成担当者に贈呈されます。

選考理由
※「第17回西洋美術振興財団賞」受賞者決定に関する報道資料より一部を抜粋して引用しています。
「出身地や活動地域、人種や民族、宗教、イデオロギーや表現方法が各々異なる16人のアーティストが一堂に会することにより、終戦直後の混乱期以来、彼女たちが少なくとも半世紀以上におよぶ濃密なキャリア(70歳以上の意味はまさしくここにある)のなかで挑戦し、経験しつつ培った現代の矛盾や偏見、差別や性格差、不平等や貧困などが浮き彫りにされる。それと同時に女性であることを超えて普遍的な視座のもと、ダイバーシティと共生は、我われ全体に突き付けられた喫緊の課題であることが視覚芸術をとおして認識させられた。コロナ・パンデミックの収束が見えないなか、ウクライナでは戦争が勃発するなど世界的に不安と緊張が強いられる今日、まことに時宜を得た企図と言えるだろう。
片岡氏が中心となり、マーティン・ゲルマン氏を共同企画者に迎えて自ら手掛けたのが本展であり、そこには多くの国際展でキュレーターや芸術監督を務めた片岡氏が蓄積してきた経験と深い学殖、世界を股にかけての人的ネットワークが見事に生かされている。さらに図録でも、エッセイはもとより内外の執筆者による作家解説も適切で充実しており、顕彰に十分に値するものと判断された。」

片岡真実 受賞コメント
「コロナ禍下、芸術の探求と制作を持続してきた参加作家のアナザーエナジーに鼓舞されながら、半世紀以上にわたる彼女たちの生き様や社会的背景を観客に伝えるため、展示および図録、ラーニングプログラムにおいて新たな試みも生まれました。この度、西洋美術振興財団賞学術賞を賜りましたことは望外の喜びであり、大変光栄に存じます。本賞は共同キュレーターのマーティン・ゲルマン、図録編集及びヴィデオインタビュー制作を担当したアソシエイト・キュレーターの德山拓一をはじめ、森美術館という組織全体に頂いたものと考えており、代表して心より御礼申し上げます。」

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撮影:伊藤彰紀

なお、現在、当館では片岡が共同企画した展覧会「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」を開催中です。是非お見逃しなくご覧ください。