森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 辻慎吾)では、東京23区内で1986年以降に竣工した事務所延床面積10,000m²以上のオフィスビル(以下「大規模オフィスビル」)を対象に、需給動向に関する調査を1986年から継続して行っております。この度、2022年版の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。

今後5年の年平均供給量は過去平均を下回る一方、オフィスの「大規模化」「都心部への集積」が進展

東京23区の大規模オフィスビルの供給量は、2023年、2025年に一定の供給が見込まれるものの、今後5年間の年平均供給量は過去平均を下回る見込みです。一方、1物件当たりの平均供給量は増加傾向にあり、今後5年間の供給において事務所延床面積10万m²以上の物件が約7割と、引き続きオフィスの「大規模化」が見込まれます。

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また、都心3区への供給割合は今後5年間で75%と、過去10年平均(71%)を超える水準が続き、主要ビジネスエリアを中心とした「都心部へのオフィス集積」が進む傾向にあります。特に、「虎ノ門」「日本橋・八重洲・京橋」「品川」「赤坂・六本木」エリアでの供給増加が見込まれます。「オフィスの大規模化」「都心部へのオフィス集積」の背景としては、国家戦略特区制度といった大規模再開発に関する法令改正などが後押しになっており、都心部における大規模・多機能な街づくりの急速な進展が予想されます。

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エリアや物件グレードにより違いが生じた空室率

空室率は2021年末で5.6%と、昨年末から1.6pt上昇しました。コロナ禍前の需給が逼迫している環境下においては、エリアによる空室率の差異は大きく見られませんでしたが、空室率が上昇していく局面においては、都心の主要ビジネスエリアの空室率は5.2%、同エリア内で事務所延床面積10万m²以上の物件では4.5%と、エリアや物件グレードによって空室率の水準に違いが生じています。また、吸収量の内訳を見ると、新築物件はオフィス供給(61万m²)の9割弱(52万m²)が吸収されている一方で、既存物件は新築物件への移転などによる解約が先行し、二次空室の埋め戻しに時間を要している様子が見られ、吸収量がマイナスに転じています。特に主要ビジネスエリア以外のエリアではその傾向が顕著となっています。

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当社が、昨年10月に実施した「東京23区オフィスニーズ調査」では、従業員のオフィス復帰(もしくは引き続きのオフィス勤務)のための課題として、「従業員が魅力的に感じるオフィス空間への改善・改修」や「従業員の通勤への負担・抵抗感の軽減」が上位に挙がっており、コロナ禍以降のリモートワークの普及とともに、単なる執務空間からコミュニケーションや人材教育・企業文化醸成の場、通勤したくなる場へとオフィスを再構築する企業各社の取組みも見られつつあります。
このような動きに呼応して、既に空室率はエリアや物件グレードによる違いが生じつつあります。今後はさらにハード・ソフト両面で企業の新たな働き方に寄与する商品力を備えた物件に、企業のオフィス需要が集まる傾向がより強くなるものと予想されます。