森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 辻慎吾)では、東京23区内で1986年以降に竣工した事務所延床面積10,000m²以上のオフィスビル(以下「大規模オフィスビル」)を対象に、需給動向に関する調査を1986年から継続して行っております。この度、2021年版の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。

東京23区の大規模オフィスビルの供給量は、2021年と2022年は低水準となり、今後5年間の年平均供給量は過去平均を下回る見込みです。一方、1物件当たりの平均供給量は増加傾向にあり、2020年は調査開始以来最大となりました。今後5年間の供給においても事務所延床面積10万m²以上の物件が約6割と、引き続きオフィスの「大規模化」が見込まれます。

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また、主要ビジネスエリアを中心に、「都心部へのオフィス集積」が進む傾向にあります。都心3区への供給割合は今後5年間で各年7割超と、過去10年平均(66%)を超える水準が続き、特に、「虎ノ門」「日本橋・八重洲・京橋」「品川」エリアでの供給増加が見込まれます。「オフィスの大規模化」「都心部へのオフィス集積」の背景としては、大規模再開発に関する法令改正などの後押しによる都心部における大規模・多機能な街づくりの急速な進展が挙げられます。

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一方、空室率は2020年末で4.0%と、昨年末から2.2pt上昇しましたが、エリアや物件グレードにより空室率の変化に違いがみられました。都心の主要ビジネスエリアの空室率は3.3%(1.5pt上昇)、同エリア内で事務所延床面積10万m²以上の物件では2.2.%(0.8pt上昇)と、都心部における大規模物件の空室率は引き続き低水準を維持しています。なお、2020年の吸収量の内訳をみると、新築物件の供給はほぼ吸収されている一方で、既存物件は新築物件への移転などによる解約が先行し、二次空室の埋め戻しに時間を要している様子が見受けられます。特に主要ビジネスエリアよりもその他エリアでその傾向が顕著になっています。

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コロナ禍においても、企業やワーカーの多様なニーズに応えられる利便性・機能性を有する好立地・ハイグレードの大規模オフィスビルは引き続き需要が集まる傾向にあります。また、リモートワークの広がりに伴うオフィス兼用住宅やサテライトオフィス、スタートアップ企業や副業を支援するオフィスなど、大規模オフィスビルとは異なるワークプレイスへの需要増加も予想され、このような多様なオフィス需要が今後のオフィスマーケットを底支えするものと思われます。