MAMコレクション008:会田 誠とChim↑Pomのカラス

主催:森美術館
企画:熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)
出展作家:会田 誠、Chim↑Pom

本展では、カラスという身近な鳥を主題とした、会田誠とChim↑Pomの作品をご紹介します。カラスは、吉兆を示す鳥あるいは太陽の象徴として世界中の多くの神話に登場する一方、腐肉食や黒い羽毛が死を連想させることから、悪や不吉の象徴としても繰り返し描かれてきました。会田の作品は、惨事の後を思わせるディストピア的な風景が、屏風絵という日本の伝統的な様式のもとに描かれています。Chim↑Pomの作品では、メンバーのエリイが、バイクの後部座席にまたがり、カラスのはく製と録音したカラスの鳴き声が流れるスピーカーを持って都内の様々な場所を訪れます。会田誠とChim↑Pomはどちらも、独自の観点、手法を用いて社会的、政治的な問題に切り込んでゆくことで知られています。カラスという共通した題材をもとに制作された両アーティストの作品は、我々の生きる社会を異なる視点から観察する好機を与えてくれるでしょう。

MAMスクリーン009:シュウ・ジャウェイ(許家維)

主催:森美術館
企画:片岡真実(森美術館副館長兼チーフ・キュレーター)

シュウ・ジャウェイは、アジア各地の歴史のなかで、正史とされる歴史からは読み取れない複雑な物語を、美しい映像作品やインスタレーションに描き出してきました。綿密なリサーチに基づいたそれらの物語は、政治的、社会的な時代の荒波に翻弄された個人史や、語られて来なかった歴史の断片を明らかにします。本スクリーニングでは、日本統治時代の台湾総督府工業研究所に秘められた物語や、冷戦時代のタイとビルマの国境近い村で、諜報員や孤児院の代表、牧師など複数の人生を演じてきた男の物語などが語られます。シュウは産業化、都市化、当事者の高齢化などによって失われていく地域の記憶や散在する資料を集め、この世界の複雑さや多様さ、記憶の不確定さなどを私たちに意識させてくれるのです。

MAMリサーチ006:クロニクル京都1990s----
ダイアモンズ・アー・フォーエバー、アートスケープ、そして私は誰かと踊る

主催:森美術館
企画:椿玲子(森美術館キュレーター)、石谷治寛(京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員)
企画協力:京都市立芸術大学芸術資源研究センター、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(アーティスト)、山中透(ミュージシャン)、シモーヌ深雪(シャンソン歌手、ドラァグクィーン)、佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授)

1990年代の京都、特に左京区では、アート、アクティビズム、クラブカルチャーなどが共存し、多様な表現活動が自由に行なわれていました。ダムタイプなど京都市立芸術大学出身者のまわりに、現代美術、ドラァグクィーン・パーティ「ダイアモンズ・アー・フォーエバー」、HIV/エイズの啓発を行うAPP(エイズ・ポスター・プロジェクト)、セクシュアリティを問い直す活動、様々な活動の拠点としてのアートスケープなど、多くのコミュニティがゆるやかに形成されていました。「そして私は誰かと踊る/And I Dance with Somebody」は「AIDS」の頭文字を使ったキャッチフレーズで、「第10回国際エイズ会議」のためにAPPによって考案されたものです。文化、宗教、言語、ジェンダーの多様性や人権についての議論が高まりを見せている今日、四半世紀前の京都の、凝縮された磁場への再訪となる本展は、現代社会の閉塞感を突破するヒントとなるでしょう。