森ビル株式会社(代表取締役 辻慎吾/東京都港区)は、マサチューセッツ工科大学メディアラボ(所長 伊藤穰一/米国マサチューセッツ州ケンブリッジ/以下、MITメディアラボ)と「未来の都市のあり方」に関して共同で研究する運びとなりました。

情報革命のインパクトが世界中に波及し、従来のヒエラルキー型からネットワーク型へと社会構造や価値観が変化しています。テクノロジーの進化は、一人ひとりがアーティストにも、エンジニアにも、デザイナーにも、なりたいものになる、欲しいものを自らデザインすることを可能にし、新しい試みや方法は加速度的に共有されています。こうした社会の大きな変革の中で、人々の働き方や暮らし方、ライフスタイルも大きく変わります。そのために都市はどうあるべきか、どのような先端技術やソフトを組み込めるのか、未来を見据えて考えなければなりません。
当社は、MITメディアラボとともに、同研究所がもつ最先端の技術の研究実験を、ヒルズを舞台に行います。また同研究所では、伊藤穰一所長を中心に、ネリ・オックスマン教授をはじめとするメンバーが参加し、プロジェクトを推進します。
森ビルは、本プロジェクトをオープン・ネットワークで進めるとともに、イノベーティブな取り組みにヒルズをプラットフォームとして積極的に開放していく予定です。森ビルは、「Cross the Boundaries(領域を超える)」を一つのキーワードに、都市のあるべき姿を根本的に考え、イノベーションを生み出していく都市づくりに挑戦します。

伊藤穰一(MITメディアラボ所長)コメント
共同研究にあたりMITメディアラボから提示したビジョンは「これからの都市の発展は、規模ではなくコンプレクシティ(complexity)が鍵を握る」です。情報量が規模を超えるということ、そのソリューションには新しい発想のシステムが必要ということです。急速に進化するバイオ(合成生物学/synthetic biology)技術もソリューションの一つとなります。今回のプロジェクトはMITメディアラボにとっても、我々がもつ発想と技術を、ヒルズをオープンな実験室として実際に応用するチャンスであり、森ビルとともに都市とテクノロジーの未来、そのビジョンを明らかにしていきたいと考えています。

辻慎吾(森ビル株式会社代表取締役社長)コメント
2020年の東京オリンピックをマイルストーンとして日本が動き出しています。私は、日本の未来は、ここ数年で何をどう変えていけるかが勝負と考えています。MITメディアラボには、まだどこにもないもの同士を結び付けてあるイメージをつくる、見えないものを観る力があります。彼らとのコラボレーションによって、最先端のテクノロジーや既存の概念を超えた新しい発想を取り入れながら、未来に向けて一歩も二歩も先を行く都市をつくっていきます。そして、ヒルズを起点に日本全体を変えていくような大きなうねりを生み出していきたいと考えています。

■マサチューセッツ工科大学メディアラボ(MITメディアラボ)とは
MITメディアラボは、領域を超えた学際的な研究や、従来異なると考えられていた研究領域を、既存の枠にとらわれない組み合わせで推進する、主に表現とコミュニケーションに利用されるデジタル技術の教育、研究を専門とする研究所。ノーベル賞受賞者を多数輩出しているマサチューセッツ工科大学内に1985年に設立された。現在、約150名の大学院生が所属、25の研究グループが350以上のプロジェクトに取り組む。テーマは、既存の研究を超えた学際的なものが求められ、電子書籍に利用されるEインク、開発途上国で配る100ドルパソコン、電気自動車、神経障害の治療、3Dディスプレイ、従来のマスメディアとは異なる新メディアの研究など多岐に渡る。

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左から)MITメディアラボ、伊藤穰一、ネリ・オックスマン

■プロフィール
・伊藤穰一
MITメディアラボ所長
FireFox開発のMozilla Foundation、WITNESS等の非営利団体のボードメンバーも務める。
PSINet Japan、デジタルガレージ、Infoseek Japanなど多数のインターネット企業の創業に携わる他、エンジェル投資家としてもこれまでに、Twitter、Six Apart、Wikia、Flickr、Last.fm、Fotonauts、Kickstarter、Path等を始めとする有望ネットベンチャー企業を支援している。2008年米国Business Week誌にて「ネット上で最も影響力のある世界の25人」、2011年米国Foreign Policy誌にて「世界の思想家100人」、2011年、2012年共に日経ビジネス誌にて「次代を創る100人」に選出。2011年英オックスフォード大学インターネット研究所より特別功労賞受賞。MITメディアラボ所長の他に、株式会社ソニー社外取締役、デジタルガレージ共同創業者・取締役、The New York Times、Knight財団、MacArthur財団、Creative Commonsのボードメンバーを務める。

・ネリ・オックスマン
MITメディアラボ メディアアート・サイエンス学部教授
建築家でありデザイナーでもあるネリ・オックスマンは、ソニーコーポレーション・キャリア開発教授兼MITメディアラボの教授を務める。MITメディアラボでは、デジタルデザインと生物学的デザインの統合を追求するメディエーテッド・マター・デザインリサーチグループを創設、運営している。オックスマンは、ICONの「我々の未来を形成する最も影響力ある建築家20人」(2009年)のリストに名を連ね、またFASTCOMPANYにより「最も創造的な人物100人」(2009年)の1人にあげられた。2008年には、SEED誌により「レボルーショナリー・マインド」に指名された。オックスマンの作品はニューヨーク近代美術館(MoMA、ニューヨーク)に展示されており、同美術館の常設展示品の一部となっている。2012年には、ジョルジュ・ポンピドゥー美術センター(フランス)が、オックスマンの作品を常設展示品として購入した。他の展示には、スミソニアン国立自然史博物館(ワシントンDC)、ミュージアム・オブ・サイエンス(ボストン)、FRACコレクション(フランス)、2010年北京ビエンナーレなどがある。また40アンダー40ビルディング・デザイン+コンストラクション賞(2012年)、グラハム財団カーター・マニー賞(2008年)、将来の重要デザインのための国際地球賞(2009年)、METROPOLIS次世代賞(2009年)などを受賞している。オックスマンは「マテリアル・エコロジー」という言葉を用いて、生態学を人工物の世界に結びつけようとしている。