現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦

森美術館は、2009年7月25日(土)から11月8日(日)まで、「アイ・ウェイウェイ展ー何に因って?」を開催します。アイ・ウェイウェイ[艾未未]は、美術、建築、デザイン、出版など多岐にわたりクリエイティブな活躍を続けている中国のアーティストです。とくに、2007年の「ドクメンタ12」における1001人の中国人が参加した《童話》プロジェクト、2008年北京オリンピック・スタジアム「鳥の巣」の設計におけるヘルツォーク&ド・ムーロンとのコラボレーションなどによって、その国際的な評価は確実なものとなりました。アイの作品は、これまでもアートや文化と社会の関係、あるいは社会全体における個人の存在などに向けられた深い洞察を拠り所としてきましたが、近年では、1999年以降関わってきた建築プロジェクトからも距離を置き、多様な表現ジャンルの枠組みに限定されない曖昧な領域のなかで、文化、歴史、政治、伝統といった人間の本質的な課題をさらに探究する方向に向かっているように見えます。
本展は、1990年代以降の主要作品を中心に、新作6点を含む26作品を展示する過去最大級の個展となります。サブタイトルの「何に因って?」は、アイ・ウェイウェイにとって現代美術への入口となったジャスパー・ジョーンズの同名の作品に由来しますが、アイの制作の背景に編み込まれた美術的、文化的あるいは歴史的な文脈の相互関連性が、展覧会を通して紐解かれることを示唆しています。会場では、立体、写真、ビデオ、サイト・スペシフィックなインスタレーションなどアイ・ウェイウェイの多様な創造活動を紹介し、「基礎的な形体とボリューム」「構造とクラフトマンシップ」「伝統の革新と継承」といった観点から、表現メディアを越えた「クリエイター」としてのアイ・ウェイウェイの意図や態度の本質を浮き彫りにします。