森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 森 稔)は、株式会社日本格付研究所(JCR)より、長期優先債務において、以下のとおり新規格付けを取得いたしましたのでお知らせいたします。
【新規格付け】 ご参照:JCRホームページ(http://www.jcr.co.jp/) |
■JCRによる評価(JCR発表資料より)
(1) 1959年に設立された不動産デベロッパーの大手。不動産の賃貸管理事業を主力事業とし、虎ノ門、赤坂、六本木など東京都港区を中心に事業を展開している。オフィス、商業施設、賃貸住宅、文化施設などが融合した市街地再開発事業ではパイオニア的存在である。中でも86年に竣工した「アークヒルズ」は、事務所、共同住宅、ホテル、コンサートホールを有し、当社の市街地再開発事業を象徴するような複合施設となった。01年に「愛宕グリーンヒルズ」、02年には「元麻布ヒルズ」、03年にもプロジェクトの構想期間に17年、総投資額も約4,000億円を掛けて、国内最大級の規模となった「六本木ヒルズ」が竣工。さらに、06年には開業1年で1,000万人を集客した「表参道ヒルズ」が完成している。国内だけではなく、96年に中国大連市で「森茂大厦(大連)」、98年には上海市で「上海森茂国際大厦(現HSBCタワー)」が竣工。08年にも超高層ビルである「上海環球金融中心」が完成する計画である。
(2) 08/3期連結業績は、売上高1,683億円(前期比5.7%増)、営業利益419億円(同0.1%減)、経常利益253億円(同11.1%減)になる見通しである。空室率の低下や賃料の上昇によって賃貸管理事業が好調な上、請負工事事業、施設運営事業なども堅調に推移しており増収となる見込み。利益面については、営業利益、経常利益とも減益となる計画であるが、減価償却費の計上方法変更に起因したものであり、実質は増益基調が維持される見通しである。オフィスの空室率低下に加え、賃料も上昇基調にあるなど、当社の主力である賃貸管理事業の事業環境は良好である。この中でも、耐震性、IT、セキュリティ環境が整ったグレードの高いビルの需要は逼迫している状況である。当社はこのようなグレードの高い物件を数多く有する。人気エリアである虎ノ門、赤坂、六本木など東京都港区を中心に、アークヒルズ、愛宕グリーンヒルズ、六本木ヒルズ、表参道ヒルズといった「ヒルズ」シリーズを展開。これらは好立地であり、国際水準のスペック、優れた耐震性とセキュリティが整っている。加えて、オフィス、商業施設、レジデンス、ホテル、文化施設など複合開発による附帯施設の充実など、長年当社が培った街全体をコーディネートする独自のノウハウが凝縮されている。稼働率及び賃料は近隣相場を大きく上回るなど、高い競争力を有している。今後も積極的に都市再開発事業を進めていく計画である。既に赤坂タワーレジデンス、(仮称)赤坂一丁目計画、平河町二丁目東部南地区第一種市街地再開発事業が着工されている上、虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業、横浜北仲通北地区なども計画されている。当社では、六本木周辺エリア、虎ノ門・赤坂・六本木周辺の大街区エリア、新橋・西新橋周辺エリアをコアエリアとし、中長期的に大規模再開発を推進していく方針である。また、海外においては、 08年に超高層ビルである「上海環球金融中心」が完成予定である。テナントも順次決定しているもようであり、賃料も当初計画を上回っていることから、中期的に当社収益に貢献するとみられる。
(3)財務構成は改善する方向にある。ここ数年間、収益が順調に拡大する中、純利益の蓄積が進んだ上、07/3期には固定資産の一部流動化による売却益計上から自己資本が大きく拡充された。この結果、連結自己資本比率は04/3期末の7.6%から07/3期末に14.6%、D/Eレシオが04/3期末の10.7 倍から07/3期末には5.0倍にまで改善している。また、債務償還能力を示す有利子負債/EBITDAについても、04/3期の23.5倍から07/3 期は13.1倍となっている。さらに、不動産市況好転の中、保有する資産の含み益が増大しており、財務的なバッファーも拡充されている。現在の不動産証券化市場の拡大、当社開発案件の競争力、出口として森ヒルズリート投資法人を有していることなどを勘案すると、この含み益は実現性の高い利益と考えられ、財務評価上、一定のプラス要因として織り込めよう。JCRでは、今後も主力の賃貸管理事業をけん引役にキュッシュフロー創出力が今後一段と高まることに加え、物件・プロジェクトの売却等によって財務基盤の強化が進められると判断している。留意すべき点は、計画されているプロジェクトが財務面に与える影響である。当社は、長期間で大型の都市再開発事業に積極的に取り組んでいる。長期プロジェクトには、規制、税制、金利、地権者との合意形成、SPCのリファイナンスなど多くの潜在的なリスクが存在する。今後も、都市再開発事業を進めていく中でこれらリスクが顕在化し、期間の長期化、頓挫するものが発生した場合には、新たなる財務負担を強いられる可能性もある。このため、プロジェクトの進捗状況、投資規模と投資資金の回収状況などについて注視していく必要がある。