森ビル株式会社

生涯"イラストレーター"宇野亜喜良が語る、仕事と芸術のこと(第4回)

2013年02月22日

今月のゲスト:イラストレーター 宇野亜喜良さん

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2月14日より『宇野亜喜良展 さよならの城』がROPPONGI HILLS A/D GALLERYで開催されます。メインとして展示されるのは、谷川俊太郎さんとの初仕事となったイラスト。「1960年代に出版された寺山修司『さよならの城』のセンチメンタルな少女性をテーマにした」と語る宇野亜喜良さんの言葉ひとつひとつから、今回の展覧会にかける想いが伝わってきました。
2月16日から公開される、劇団「新宿梁山泊」による舞台『ロミオとジュリエット』の美術も担当。従来のイラストレーターの枠にとらわれず、演劇や広告など幅広い仕事をしながらも自らを「イラストレーター」と名乗ることにこだわる理由とは。今年で79歳を迎える現在もなお第一線で活躍する宇野さんに、変容する時代の中で歩んできたイラストレーターという仕事への考え方を伺いました。

ホームグラウンドで展覧会を開くということ
地元、麻布十番との独自の関わり合い方

六本木と麻布十番は、僕にとってとても馴染みの深い街です。六本木に自宅があり、麻布十番に仕事場があるので。六本木ヒルズ周辺もよく散歩をしています。昔は麻布十番に地下鉄はありませんでした。現在は、地下鉄が2つも通っているので、夏に行われる十番祭りには相当なお客さんが集まりますよね。町内の人と知り合って、かれこれ10年くらい麻布十番納涼祭りのフラッグやポスター、Tシャツ、うちわなどをつくったりしています。
以前、何かで賞をもらったことが新聞に載って、それを見た方が「自分の街にこういう絵を描く人がいるんだ」と知ってくれたことで最初の依頼がありました。こうやって、地元の方々との関わり合いを長く持たせてもらっているのも、この仕事のおかげだと思っています。

展覧会に向けての最終確認

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今回の六本木で行われる僕の個展には、最新の作品も展示されます。楽しみな反面、怖いとも感じています。もしこの展覧会のあとに傑作をつくったとしても、展覧会に並んでいる作品で現時点の宇野亜喜良が評価されてしまう。しかしながら、個展用の作品を進めているときに、「何か新しいものが生まれるんじゃないか」っていうかすかな希望はありますね。
また、今まで展覧会に出品しなかった作品群や、日常のグラフィック、印刷の為に描いた原画なども含めて出すことを考えています。僕の仕事の中で感傷的なものや、女性性の強いものをセレクトしていきたいと思っています。ゆかりあるこの土地で個展を開くということは、考えてもいなかったことなので嬉しく思っています。森ビルができたおかげで、この街は非常に繁栄しているのではないでしょうか。

プロフール

1934年名古屋生まれ。1952年名古屋市立工芸高校図案科卒業。画家の宮脇晴に師事後、カルピス食品工業、日本デザインセンターを経てフリー。1964年スタジオ・イルフイルを設立。翌年離脱後、同世代を代表するイラストレーターと共に東京イラストレーターズ・クラブ設立。日宣美特選、日宣美会員賞、講談社出版文化賞、サンリオ美術賞、赤い鳥挿絵賞、日本絵本賞等を受賞。1999年紫綬褒章受章。2010年旭日小綬章受章。
主な作品に「宇野亜喜良60年代ポスター集」「サロメ」「少女からの手紙」「奥の横道」「MONO AQUIRAX +」、絵本に「あのこ」(今江祥智・文)「白猫亭」「上海異人娼館」(寺山修司・原作)、詩画集「ami」等多数。キュレーターや舞台美術も手掛ける。