森ビル株式会社

「人に伝えること」に挑戦するアーティストが仕掛ける一夜(第2回)

2013年01月11日

今月のゲスト:アーティスト 日比野克彦さん

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一晩中、アートにまつわる様々な催しが行われ、多数のアーティストや一般市民が参加する日本最大級のアートの饗宴「六本木アートナイト」。開催5回目を迎える今年、アーティスティックディレクターに日比野克彦さんが就任しました。80年代から領域横断的な活動が注目を浴びてきた日比野さんが、今回のイベントにかける意気込みとは。アートを通して「人に伝えること」に挑戦し続けてきた日比野さんならではの思いに、「六本木アートナイト2013」への期待が一層高まります。

日々野克彦のモノをつくるエネルギー
コミュニケーションが表現の源

「孤高のアーティスト、わが道を行く」というような、世間とは縁を切って自分の美学を追及するアーティストもいると思うのですが、自分にはちょっとできないと思います。僕の場合は、人に伝わったときに表現になる。
世界中に自分ひとりしかいなかったら、表現なんてしないかもしれない。自分以外にもう一人、それは別に人間じゃなくてもいいかもしれないけれど、例えば犬が横にいて、一緒に、夕日の色がどんどん変わっていくのをずっと見ていて不思議な気持ちになったとします。ふと横見たら犬も見ているような気がして、犬に自分の今モヤモヤした気持ちを伝えたいとか、「お前もそう思っている?」と共感したいと思って、何かアクションをする。それに対して犬が応える。それが表現です。
僕は、伝えたいと思ったり、伝わったなと感じたときに、表現になっていくと思っています。自分がモノをつくるエネルギーは人との接し、コミュニケーションがあるからこそですね。

比較してわかるアートの世界

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アートには「絶対」がないんです。比較してやっと自分が見えてくる。例えば数学だったら、1は絶対的に1なんだけれども、美術でいう「赤い色」という色でいえば、自分が「これって絶対赤だよな」と思っていても、横にもっと赤い色が来ると、「うそ、これ茶色だったんだ」となるじゃないですか。自分がずっと大切にしていた緑色が50年後に見ると、「あれっ、こんな色じゃなかったはずだ」って。
美術は比べて、その価値が見えてくるものだと思うんです。だから、地方にいても、東京にいても、海外にいても、自分らしさ、「これは東京になくて田舎にあるんだよ」ということを知るにも、東京を知っていないとわからないし、東京の良さを知るにも、日本全国各地域のことを知らなければいけないだろうし、それでやっと東京の価値がわかってくるのだと思います。

『六本木アートナイト2013』

日時:2013年3月23日(土)10:00 ~ 24日(日)18:00
コアタイム:日没(17:55)から日の出(5:39)まで
場所:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース

プロフール

アーティスト。1958年、岐阜市生まれ。東京藝術大学大学院修了。1980年代に領域横断的、時代を映す作風で注目される。作品制作の他、身体を媒体に表現し、自己の可能性を追求し続ける。各地域の参加者と共同制作を行い社会で芸術が機能する仕組みを創出。ぎふ清流国体•ぎふ清流大会総合プロデューサーを務める。日本サッカー協会理事。東京藝術大学美術学部先端藝術表現科教授。