森ビル株式会社

天才美術家・会田誠、その天才たる所以を知る(第2回)

2012年12月07日

今月のゲスト:美術家 会田誠さん

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森美術館で、2012年11月17日〜2013年3月31日まで開催されている『会田誠展:天才でごめんなさい』。会田誠の個展が美術館で開催されるのは今回が初めて。その上、展示作品数は、過去の作品だけでなく新作も含め、100点を上回ります。「お化け屋敷を周るように、気楽に入って、ギョッとして帰ってほしい」と話す会田さん。実は現在展示中の新作は、会期が始まってもなお未完。美術館閉館後の徹夜での制作活動に奔走している最中だそうです。どのような思いを込められて新作が仕上げられていくのか、貴重な機会にお話しを伺うことができました。

森美術館で展覧会を行うということ
観客を刺激させ続けるような経路を作る

森美術館は、東京の真ん中に位置しているので交通の便がよく、人が集まりやすいですよね。「人が集まる」というのは、僕にとってとても喜ばしいことです。森美術館、森ビルというと、やはりある種の象徴性、つまり「セレブ」などという言葉も連想するような場所ですが、美術館側としても、僕にそういうものを求めて展覧会のオファーをしたわけでもないでしょうから、場所のイメージに引っ張られないでいつもどおりにやろうということは意識しています。
展覧会の内部は、お化け屋敷を周るように、「ここの角を曲がったら、一つ目小僧が出てきた!」と、お客さんを刺激させ続ける経路をイメージしています。

間接的な自己顕示欲が作品を作らせる

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《ハート》2011年
電気制御盤制作:勢濃 徹|制作協力:張 嘉巖
Electric control system: Seno Toru|Cooperation: Andy Chang
撮影:渡邉 修 Courtesy: Mizuma Art Gallery

「どうして作品を作っているのか」と、インタビューでもよく聞かれるのですが、「わからない」というのが正直なところです。「自分が作ったものを人に見てもらいたい」という欲求は子供のころからありましたね。生まれたときから備わっている、自己顕示欲でしょうか。
ライブやパフォーマンスをやって生身の自分自身を見てもらいたいということでなく、間接的に、作ったものを見てほしいという形の顕示欲が生まれもってついているみたいです。それがやめられないから作品作りをしているので、「社会的使命で」といった想いではないんです。作風のバラつきは僕の方針とも言えるかもしれません。現代人は、絵を描くときに墨を使ってもいいし、CGを使ってもいい。僕は自分に制限をかけずに、やれるものだったら何でもやるという軽薄さを見せていこうかなと思っています。

『会田誠展:天才でごめんなさい』

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「会田誠展:天才でごめんなさい」展示風景
撮影:渡邉 修 Courtesy: Mizuma Art Gallery

会期:2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館、企画:片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)
協力:ミヅマアートギャラリー、シャンパーニュ ニコラ・フィアット、ボンベイ・サファイア

プロフール

1965年新潟県生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。美少女、戦争画、サラリーマンなど、社会や歴史、現代と近代以前、西洋と東洋の境界を自由に往来し、奇想天外な対比や痛烈な批評性を提示する作風で、幅広い世代から圧倒的な支持を得ている。国内外の展覧会に多数参加。
主な展覧会に「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」(森美術館、2004年)、「ビリーフ」(シンガポールビエンナーレ、2006年)、「アートで候 会田誠・山口晃展」(上野の森美術館、2007年)、「バイバイキティ!!! 天国と地獄の狭間で―日本現代アートの今―」(ジャパン・ソサエティ、ニューヨーク、2011年)、「ベスト・タイム、ワースト・タイム 現代美術の終末と再生」(第1回キエフ国際現代美術ビエンナーレ、ウクライナ、2012年)など。また昭和40年生まれのアーティストで結成された「昭和40年会」、美術家の妻・岡田裕子主宰のオルタナティブ人形劇団「劇団☆死期」、小説やマンガの執筆など活動は多岐にわたる。