森ビル株式会社

天才美術家・会田誠、その天才たる所以を知る(第1回)

2012年12月01日

今月のゲスト:美術家 会田誠さん

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森美術館で、2012年11月17日〜2013年3月31日まで開催されている『会田誠展:天才でごめんなさい』。会田誠の個展が美術館で開催されるのは今回が初めて。その上、展示作品数は、過去の作品だけでなく新作も含め、100点を上回ります。「お化け屋敷を周るように、気楽に入って、ギョッとして帰ってほしい」と話す会田さん。実は現在展示中の新作は、会期が始まってもなお未完。美術館閉館後の徹夜での制作活動に奔走している最中だそうです。どのような思いを込められて新作が仕上げられていくのか、貴重な機会にお話しを伺うことができました。

初の大個展は、「気楽にいつもどおり」に
『会田誠展:天才でごめんなさい』はひとつの通過点

今、六本木ヒルズの森美術館で、『会田誠展 天才でごめんなさい』という僕の個展が開催されています。威張っているのか謙虚なのかよくわからない、意味不明なタイトルになりました(笑)。今回美術館では初めての大きな個展ということで、基本的には、今までつくってきたものの主要な作品を見せる回顧展となっています。それだけだとお客さんに満足していただけないので、新作も発表します。僕のバラけている作風をあまり整理整頓せず、あえて分裂したまま見せてしまおうという展覧会になりました。
森美術館を舞台に初個展というのは、緊張しないといえばうそになりますね。でもこれから先も僕の創作は続いていくのでここであまり燃え尽きないように、今回の個展をひとつの通過点と意識して、気楽に作ろうと努めました。

作品のアイデアが生まれるときは一瞬で

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会田 誠《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》
1996年 零戦CG制作:松橋睦生
高橋コレクション蔵、東京
Courtesy: Mizuma Art Gallery

これまでの僕の作品は、すべて大体一秒以内にパッとアイデアが浮かんだもので、ジクジクと考えて生まれるものではないんです。例えばニューヨークのゼロ戦の絵。太平洋戦争に関して、子供のころから考えてきた時間の蓄積は多くあっても、作品として表現するときのアイデアはパっと一秒で仕上げます。社会的な問題で何か気になることがあって、「作品のテーマにしたい」と思ってウンウンうなって考えても、美術作品が生まれるとは限らない。むしろ、ウンウンうなって考えてしまうと、作品にはならないんです。
昔は電車の吊り広告にある一行見出し、最近ではネットニュースの見出しを見ながらふと作品が浮かぶことがあります。美術は、言葉や主張を最終的に絵や図柄に変換しないと作品になりません。いくら思いが強くても作品にならないものはならない。だから、完成形のすべてのディテールをパッと一瞬でイメージできるようになるまで、待つようにしています。

『会田誠展:天才でごめんなさい』

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「会田誠展:天才でごめんなさい」展示風景
撮影:渡邉 修 Courtesy: Mizuma Art Gallery

会期:2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館、企画:片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)
協力:ミヅマアートギャラリー、シャンパーニュ ニコラ・フィアット、ボンベイ・サファイア

プロフール

1965年新潟県生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。美少女、戦争画、サラリーマンなど、社会や歴史、現代と近代以前、西洋と東洋の境界を自由に往来し、奇想天外な対比や痛烈な批評性を提示する作風で、幅広い世代から圧倒的な支持を得ている。国内外の展覧会に多数参加。
主な展覧会に「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」(森美術館、2004年)、「ビリーフ」(シンガポールビエンナーレ、2006年)、「アートで候 会田誠・山口晃展」(上野の森美術館、2007年)、「バイバイキティ!!! 天国と地獄の狭間で―日本現代アートの今―」(ジャパン・ソサエティ、ニューヨーク、2011年)、「ベスト・タイム、ワースト・タイム 現代美術の終末と再生」(第1回キエフ国際現代美術ビエンナーレ、ウクライナ、2012年)など。また昭和40年生まれのアーティストで結成された「昭和40年会」、美術家の妻・岡田裕子主宰のオルタナティブ人形劇団「劇団☆死期」、小説やマンガの執筆など活動は多岐にわたる。