森ビル株式会社

メタボリズムに学ぶ、都市と文明のヒント(第4回)

2012年01月20日

今月のゲスト:建築評論家・建築史家 松葉一清さん

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1960年はじめに日本で発表された建築理論『メタボリズム』。若い建築家たちが建築や都市計画について考え抜き、情熱を注いで辿り着いたその建築理論から、「元気をもらった」と話すのは建築評論家の松葉一清さんです。3月11日の大震災発生から大きな課題となっている復興のヒントも、そこに隠されていると言います。50年以上前に考えられた建築理論に、一体何が込められているのか。『メタボリズム』、そして都市と文明について、松葉さんにお話を伺いました。

復興建築について思うこと
2月に出版する『帝都復興史』について

震災のあとから、やはり復興について文章を書いたり、話をしてほしいと言われることが多くなっています。去年の秋には平凡社から、『復興建築の東京地図』という本を出版しました。
復興期というのは関東大震災のあとの大正12年から昭和5年ぐらいを指すのですが、それからもうちょっと後までの地図帳です。
その本を準備しているときに、高橋重治さんという方が1人で書かれた『帝都復興史』という非売品の本を読んでいました。これが3冊、全部で4,000ページあるんですが、その4,000ページをずっと読んでいるうちに、当時の都市に対して、復興に対して、すごく前向きな気持ちがページにあふれていて、これは今の人たちに読んでもらったほうがいいんじゃないかと思ったんです。ただ、4,000ページの本をつくるわけにはいかないので、新潮社とお話をしまして、4,000ページのものを400字の原稿用紙400枚ぐらいで、いわゆる解題していくというものを、2月25日に新潮選書で刊行することになっております。
ぜひご興味ある方は見ていただけたらと思います。

国家には復興のシンボルを作ってほしい

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太陽の地図帖シリーズ「復興建築の東京地図」
松葉一清さん監修

ニュースで復興についての映像を見るたび、震災から何か月か経っているのに建物が一向に立ち上がってこないという印象ですね。多少語弊があるかもしれないのですが、今の民主党政権の復興の考え方を見ていると、現地に御用聞きに行ってしまっているとも感じます。
確かに現場の要望はすごく大事なことなんですけれども、やはり国家の大きな助けがないと、なかなか立ち上がれない。シンボルになるものを作っても良いのではないかと思います。それに対してすごく批判も出るんでしょうけれども、批判も含めて、ある種のたたき台になるようなプロジェクトがあってもいいんじゃないでしょうか。
関東大震災の後もそうでしたけれど、区画整理ですごくもめるんです。モデルになるような骨格を国で用意してほしいですね。

プロフール

建築評論家・建築史家。1953年 兵庫県神戸市生まれ、京都大学工学部建築学科卒業、武蔵野美術大学 教授。 近代建築史、近代都市史、現代建築評論、都市と建築の過去、現在、未来を歴史、景観、社会制度、デジタルカルチャーとの関係などの視点で考察。 著書に『帝都復興せり!ー『建築の東京』を歩く 1986ー1997 』(1997年 朝日文庫)、『パリの奇跡ー都市と建築の最新案内』(1998年 朝日文庫)、『モール、コンビニ、ソーホー』(2002年 NTT出版)、『新建築ウォッチング 2003ー2004』(2004年 朝日新聞社)ほか多数。