森ビル株式会社

サントリーホールが見つめた、東京と音楽の25年とその未来(第3回)

2011年12月16日

今月のゲスト:チェリスト 堤 剛さん

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東京初のコンサート専用ホールとして誕生したのが1986年。今年、サントリーホールは25周年を迎えました。
アークヒルズの一画で地元の音楽ファンと共に育ち、着実に世界へその音色と名前を響かせてきたこのホールは、今では音楽ファンから「世界で5本の指に入るホール」とも称されるまでに成長しています。
ホール設立当初から計画に携わり、2007年からは館長を務めている堤 剛さん。チェリストとして世界で演奏活動を行い、2010年には演奏活動60周年を迎えました。音楽と共に歩んできた堤さんに、サントリーホールの魅力と、見据えているホールの未来についてのお話しを伺いました。

素晴らしいコンサートを支える、音楽を取り巻く環境
サントリーホールが愛される秘密とは

海外のアーティストや指揮者、演奏者の方々から、「サントリーホールでは、プラスアルファようなものを感じられて、とても良い演奏ができる」とおっしゃっていただくことがよくあるんです。それはどういうことなんだろうとスタッフと考えるんですが、サントリーホールの楽屋口受付に入ると、まず警備員の方たちの対応からして本当に素晴らしいんですね。
ホールで働いている人の総数は、200人を超えるんですけれど、その200人以上の方たちの、「ここで世界最高の演奏をしていただきたい、そのために自分たちもベストを尽くす」という気持ちが、ホールを漂っているような雰囲気があるんです。きっと海外から訪れた方たちにもそれが伝わって、「サントリーホールではいつもより良い演奏ができる」と言っていただくことに繋がっているのだと思います。

全てをフォローする東京の素晴らしさ

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2010年「堤剛プロデュース」公演(サントリーホール提供)

東京には、所謂プロと呼ばれるオーケストラが10団体以上あります。これは世界の都市を見ても東京だけのことなんです。私たちがやっていることはクラシック音楽に特化していますが、それだけじゃなくて東京には本当に幅広いものがあって、その幅広さが東京の素晴らしいところだと思います。
サントリーホールのある赤坂に限って言っても、超近代的な高層ビルもあれば、「ああ、こんな家がまだあるのか」という伝統的、日本的な木造家屋も残っている。色々なものがお互いを助け合ったときに1番大きな力を発揮するようなところがありますよね。日本の伝統音楽や、歌舞伎や能、文楽のような伝統的な芸能も、自分にとってはかけがえのない財産です。

プロフール

チェリスト。東京都生まれ。幼少から父にチェロの手ほどきを受けて育つ。1963年、ミュンヘン国際コンクールで第2位、ブダペストでのカザルス国際コンクールで第1位入賞を果たし、以後国内外での本格的な活動を開始。世界各地で定期的にリサイタルを行い、 “堤剛プロデュース”と題するリサイタルシリーズも毎年開催。2001年より霧島国際音楽祭音楽監督。1988年秋より2006年春までインディアナ大学の教授を務め、2004年4月より桐朋学園大学学長の任にある。2007年9月、サントリーホール館長に就任。2009年秋の紫綬褒章を受章。演奏活動60周年を迎えた2010年には、記念盤「アンコール」(マイスターミュージック)がリリースされた。日本芸術院会員。