森ビル株式会社

サントリーホールが見つめた、東京と音楽の25年とその未来(第1回)

2011年12月02日

今月のゲスト:チェリスト 堤 剛さん

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東京初のコンサート専用ホールとして誕生したのが1986年。今年、サントリーホールは25周年を迎えました。
アークヒルズの一画で地元の音楽ファンと共に育ち、着実に世界へその音色と名前を響かせてきたこのホールは、今では音楽ファンから「世界で5本の指に入るホール」とも称されるまでに成長しています。
ホール設立当初から計画に携わり、2007年からは館長を務めている堤 剛さん。チェリストとして世界で演奏活動を行い、2010年には演奏活動60周年を迎えました。音楽と共に歩んできた堤さんに、サントリーホールの魅力と、見据えているホールの未来についてのお話しを伺いました。

25周年を迎えたサントリーホールに込められた想い
コンサートの後の余韻を大切にしてほしい

アークヒルズの一画にあるサントリーホールは、2011年で25周年を迎えました。25年間で、海外の演奏家・音楽ファンの方からも「世界で五本の指に入るホールの一つだ」と言っていただけるくらいに成長しました。
このホールには、「日本の音楽芸術の水準を世界に発信できるようなホールを作りたい」という初代館長・佐治敬三の強い望みが込められているんです。初代館長の想いを引き継いだ私たちは、一流のコンサートを企画して、それを続けていかなくてはなりません。
ホールそのものが立派だとか、音響が晴らしいということも重要な要素ですが、サントリーホールを訪れたお客様が素晴らしいコンサートのあとに余韻を楽しめるような場所であるということを、私はすごく大切に考えています。アークヒルズという場所は、お客様が余韻を楽しめる環境が整っているので、その点でもサントリーホールは恵まれていると思っています。

ホールとは創造したものを伝達する場所

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2011年チェンバーミュージック・ガーデン「堤剛プロデュース」公演(サントリーホール提供)

チェリストとして演奏を続けて、60年になります。我々のような演奏家は楽譜があって、それを再創造するクリエイターです。私が弓を動かしチェロという楽器を弾くことで何かが生まれ、生まれたものが伝達する価値のあるものであれば、それをお客様に伝えて素晴らしさをシェアしていただくことができる。
創造し伝達するそのプロセスをいかにうまくできるかというのが良いホールの基準になるのですが、私はそれ以上に、ホールという場所でお客様と会話を楽しみたいと思っているんです。伝達したものが広がっていくこと、自分の生きがいはそんなところにあるんだなと思っています。

プロフール

チェリスト。東京都生まれ。幼少から父にチェロの手ほどきを受けて育つ。1963年、ミュンヘン国際コンクールで第2位、ブダペストでのカザルス国際コンクールで第1位入賞を果たし、以後国内外での本格的な活動を開始。世界各地で定期的にリサイタルを行い、 “堤剛プロデュース”と題するリサイタルシリーズも毎年開催。2001年より霧島国際音楽祭音楽監督。1988年秋より2006年春までインディアナ大学の教授を務め、2004年4月より桐朋学園大学学長の任にある。2007年9月、サントリーホール館長に就任。2009年秋の紫綬褒章を受章。演奏活動60周年を迎えた2010年には、記念盤「アンコール」(マイスターミュージック)がリリースされた。日本芸術院会員。