森ビル株式会社

建築を通して、都市と時代を見つめる(第4回)

2011年09月22日

今月のゲスト:建築史家・建築家 藤森照信さん

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建築史家・建築家の藤森照信さんは、未来の都市を作るヒントは「メタボリズム」にあると言います。「メタボリズム」は、1960年代に若い建築家の間で起きた「変化」をキーワードとする建築運動。森美術館では、『メタボリズムの未来都市展』が9月17日から1月15日まで開催されます。展覧会に先駆けて、建築に馴染みがないと聞きなれない「メタボリズム」の解説から、なぜ今「メタボリズム」なのか。そして現在日本が抱えている都市の問題まで、藤森さんにお話をしていただきました。

第4回 東京が世界に誇る都市の宝
アジアは鉄道を捨ててはならない

東京は、鉄道網に関して世界屈指のインフラを持っている都市です。戦後、アジアの多くの都市が鉄道を捨ててしまいました。アメリカが自動車の時代をリードして、ヨーロッパに広がっていきます。それは人口密度が小さいからよかったのですが、アジアの都市の人口密度は、ヨーロッパのそれとは比べ物になりません。
人口が高密度で広がっているところでは、輸送力に限界がある自動車よりも、地下鉄を含めた鉄道が相応しい。それを、日本は捨てませんでした。山手線と新幹線は、世界の都市の宝といっても過言ではないでしょう。その宝の上で、自然をどうしていくかということが、今後の大きな課題ではないでしょうか。

東京の都市としての面積は驚くほど大きい

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高過庵

ひとつの都市として東京の面積は、他の都市と比べると異常なほど大きいんです。最近、新しくできるスカイツリーに上らせてもらう機会があったのですが、高いところから眺めると都市が関東平野にずっと広がっていくのが地図のようにわかりますね。そして、その広がり方には驚かされます。
ニューヨークやヴェネチアは、一か所にビルが固まっています。人口密度の限界がありますから、高いビルがあってさらにずっと建物が広がっていくという光景にはそうそう出合いません。
東京はその両方を持っている都市です。

プロフール

建築史家・建築家。1946年、長野県生まれ。茅野市で神長官守矢史料館(1991年)を設計し建築家としてデビュー。自然素材や植物を用いて、これまでに20作品以上の独創的な建築を創り続けている。藤森、友人、施主からなる「縄文建築団」が建築施工に参加し手作りすることもその特徴となっている。1997年、作家・赤瀬川原平の自宅として設計した「ニラハウス」で第29回日本芸術大賞。2001年には、「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞(作品)を受賞。2006年の第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展では日本館のコミッショナー(兼出品者)に就任、自身の建築と、路上から観察できる森羅万象を対象とし、無用の「美」を採集する路上観察を紹介した。