森ビル株式会社

建築を通して、都市と時代を見つめる(第3回)

2011年09月16日

今月のゲスト:建築史家・建築家 藤森照信さん

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建築史家・建築家の藤森照信さんは、未来の都市を作るヒントは「メタボリズム」にあると言います。「メタボリズム」は、1960年代に若い建築家の間で起きた「変化」をキーワードとする建築運動。森美術館では、『メタボリズムの未来都市展』が9月17日から1月15日まで開催されます。展覧会に先駆けて、建築に馴染みがないと聞きなれない「メタボリズム」の解説から、なぜ今「メタボリズム」なのか。そして現在日本が抱えている都市の問題まで、藤森さんにお話をしていただきました。

第3回 現代建築の動きを俯瞰する『メタボリズムの未来都市展』
縁深い森美術館で開催されること

森美術館は、コルビュジェを多く集めている美術館です。そのコレクションは日本、いや世界で屈指のものなのではないでしょうか。コルビュジェは、建築家であり絵描きでもありました。同世代にピカソやブラックといった大画家たちがたくさんいたせいで絵描きとしては沈んでしまった印象がありますが、本当は素晴らしい画家だったと思います。
メタボリズムも、コルビュジェの流れを汲んでいます。コルビュジェのコレクションをきちんと集めていた森美術館で、『メタボリズムの未来都市展』が開かれるのには非常に縁を感じますね。

メタボリズムは夢に溢れている

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一夜亭

『メタボリズムの未来都市展』では、この50年間の世界の建築の動きを知っていただけると思います。メタボリズムは、すごく未来的で夢に溢れていて、建築に明るくない人でも十分楽しんでいただけると思います。メタボリズムに大きな影響を与えた丹下健三さんの都市計画「東京計画1960」には、当時携帯電話もなかったにも関わらず「電話は携帯できるようになる」という予言的な言葉もあり、「情報化の時代である」と言い切られています。
情報化という目に見えない問題は、建築のような重たい物質的なものには関係ないように思われますが、人間の感覚に影響を与えるので、建築にもいずれ大きく関係してきます。そういったなかで、自分たちで問題を発見して解決するという日本の若い建築家が出てきたのがメタボリズムです。

森美術館『メタボリズムの未来都市展』

会期:2011年9月17日(土)~2012年1月15日(日)

『メタボリズム』とは、「生物が代謝を繰り返しながら(生物学用語で“メタボリズム”は“新陳代謝”を意味する)成長していくように建築や都市も有機的に変化できるようデザインされるべきである」というマニフェストとして、1960年代に日本で発表された建築理論です。
本展は、『メタボリズム』に今日どのような意義があるのかを問いかける、世界で初めての展覧会となる。メタボリズム運動誕生の背景となった丹下健三の思想・事蹟と、1960年代を中心とした『メタボリズム』の活発な活動、1970年の大阪万博までを資料、模型などで紹介します。

プロフール

建築史家・建築家。1946年、長野県生まれ。茅野市で神長官守矢史料館(1991年)を設計し建築家としてデビュー。自然素材や植物を用いて、これまでに20作品以上の独創的な建築を創り続けている。藤森、友人、施主からなる「縄文建築団」が建築施工に参加し手作りすることもその特徴となっている。1997年、作家・赤瀬川原平の自宅として設計した「ニラハウス」で第29回日本芸術大賞。2001年には、「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞(作品)を受賞。2006年の第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展では日本館のコミッショナー(兼出品者)に就任、自身の建築と、路上から観察できる森羅万象を対象とし、無用の「美」を採集する路上観察を紹介した。