森ビル株式会社

「ロック」の看板を下げ、ふるさと・福島に思うこと(第2回)

2011年08月12日

今月のゲスト:クリエイティブディレクター 箭内道彦さん

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「風とロック」を解散し、2011年7月に新会社を立ち上げたクリエイティブディレクター、箭内道彦さん。福島県出身の箭内さんは、震災からこれまで、福島を支える様々な活動を続けてきました。自身が参加するバンド「猪苗代湖ズ」では全収益を福島県災害対策本部に寄付する『I love you & I need you ふくしま』という曲をリリース。9月14日〜19日には、福島県の6カ所を巡る野外イベント「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」を計画中です。
「明日死んでも構わない」というロックンロールの精神を貫いてきた箭内さんが、会社の看板から「ロック」を下げ、「長生きしたくなった」というまでには、どんな心境があり、今何を考えているのか。新会社「すき」「あいたい」「ヤバい」設立に込められた想いまで、お話を伺いました。

第2回 野外イベント「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」を開催
世界中の人に伝えたいメッセージがある

9月14日〜19日まで、「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」というイベントを開催します。「Nothing beats FUKUSIMA, does it?」「福島はどんなことがあってもくじけないぜ」というメッセージを軸に、「福島の今」を全国、全世界に伝えていこうというメッセージイベントです。
「相馬野間追」という、浜通り地方で伝統的に行われているお祭りから名前を借りて、福島の中を馬に乗って移動するようなイメージで、6カ所を横断していきます。おととしは「風とロックFES福島」、去年は「風とロック芋煮会」という名前で、福島でイベントをしていました。
「福島の人達、もっと自分を出していいんじゃないか」ということから始まったイベントだったのですが、今年からは、福島から世界中の人に伝えなきゃいけないものがある。それならば、世界中の人が理解できる言葉のタイトルにしようということで、「LIVE福島」です。

原発事故の不安があるなか、野外イベントを開催すること

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「LIVE福島」記者会見の様子

「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」は、6日間全て野外で行われるイベントです。大勢のミュージシャンが賛同してくれて、「こんな人達が福島に来るの?」と驚かれるような大規模なイベントになってきていると思います。
ただ、若い人が「行きたい」って思ってくれた時、ご両親がすごく心配する家もあるかもしれない。何をもとに判断をして良いか難しくなっていると思うので、判断のための材料をこちらが提示していかなきゃいけないと考えて、今は放射線の量を測りに行ったり、大学の先生に話を聞きに行ったりという準備を続けています。
福島の人の意見にも「福島を安全だと言ってほしい」という人と、「『福島は安全だ』と思われて安心されたくない」という2つあって、常にこの相反する2つ意見が頭の中を巡っていますね。これから先、開催までに何が起こるかわからない。本当に開催するかどうか、そして開催してからも中断せざるを得ないことになるかもしれないということは、僕の中で想定して進んでいかなきゃいけないなと思っています。

プロフール

1964年、福島県生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。博報堂を経て、2003年「風とロック」を設立。1996年より、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターの制作を手がける。最近制作のTVCMには、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロ「TOKYO HEART」「TOKYO WONDERGROUND」、サントリー「ほろよい」、また、怒髪天 増子直純氏出演の桃屋「辛そうで辛くない少し辛いラー油」、BRAHMANの楽曲起用が話題を呼んだCHIFURE「SAVE WOMAN」ほか。2011年6月末で、「風とロック」「ロックンロール食堂」を解散。7月より、新会社「すき」「あいたい」「ヤバい」を新たに設立した。