森ビル株式会社

「ロック」の看板を下げ、ふるさと・福島に思うこと(第1回)

2011年08月05日

今月のゲスト:クリエイティブディレクター 箭内道彦さん

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「風とロック」を解散し、2011年7月に新会社を立ち上げたクリエイティブディレクター、箭内道彦さん。福島県出身の箭内さんは、震災からこれまで、福島を支える様々な活動を続けてきました。自身が参加するバンド「猪苗代湖ズ」では全収益を福島県災害対策本部に寄付する『I love you & I need you ふくしま』という曲をリリース。9月14日〜19日には、福島県の6カ所を巡る野外イベント「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」を計画中です。
「明日死んでも構わない」というロックンロールの精神を貫いてきた箭内さんが、会社の看板から「ロック」を下げ、「長生きしたくなった」というまでには、どんな心境があり、今何を考えているのか。新会社「すき」「あいたい」「ヤバい」設立に込められた想いまで、お話を伺いました。

第1回 震災後、ふるさとへの想いが急激に変化した
福島をネタにしていた人間が震災後にとった行動

3月11日の夜、僕はすごく焦っていました。福島に行きたいと言っても、地元の新聞社もメディア関係者も「今来られても困る」と言うので、自分で車を運転して行こうかなと思ったくらい。ミュージシャンのライブも数多く中止になりましたし、僕のような福島出身者だけでなく、みんなが無力感を感じた夜だったのではないでしょうか。
僕は、5年くらい前から「福島のこういうところが嫌いだ、だから帰りたくないんだ」ということを歌にしたり、発言したり、広告でそれを表現したりした時期だったんです。そんな時に、震災が起きた。ずっと福島をネタにしてきた男が、静観しているのも格好悪いだろう、という焦りもありました。

『I love you & I need you ふくしま』が生まれるまで

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猪苗代湖ズ

「猪苗代湖ズ」というバンドを結成したのは、2010年の9月でした。
メンバーは、サンボマスターの山口隆とTOKYO NO.1 SOUL SETの渡辺俊美と、THE BACK HORNの松田晋二と僕の4人組で、みんな福島県出身なんです。
震災が起きてからは、音楽で何かできないかということを考え始めて、17日には4人で名古屋にレコーディングをしに行きました。東京は節電が声高に叫ばれていたタイミングだったので、「歌うことに集中するために東京を離れよう」という話をして、名古屋へ。そうして完成した「猪苗代湖ズ」の『I love you & I need you ふくしま』を配信して、収益の全額を福島県の災害対策本部に寄付することにしました。

プロフール

1964年、福島県生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。博報堂を経て、2003年「風とロック」を設立。1996年より、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターの制作を手がける。最近制作のTVCMには、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロ「TOKYO HEART」「TOKYO WONDERGROUND」、サントリー「ほろよい」、また、怒髪天 増子直純氏出演の桃屋「辛そうで辛くない少し辛いラー油」、BRAHMANの楽曲起用が話題を呼んだCHIFURE「SAVE WOMAN」ほか。2011年6月末で、「風とロック」「ロックンロール食堂」を解散。7月より、新会社「すき」「あいたい」「ヤバい」を新たに設立した。