森ビル株式会社

人を、社会を幸せにする、笑顔のデザイン(第1回)

2011年06月03日

今月のゲスト:アートディレクター 水谷孝次さん

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人々の「笑顔」を伝えるデザインを手掛ける、アートディレクターの水谷孝次さん。大手企業の広告制作を手掛けていた水谷さんは、99年に<Merry Project>を開始。それから10年以上、「笑顔は世界共通のコミュニケーション」を合言葉に世界中で人々の笑顔の写真とメッセージを集め、傘やポスターにして各地に拡散する活動を続けてきました。震災が起きてからは、「今こそ笑顔の力が必要だ」という想いを胸に被災地を訪れ、希望を持って強く生きる人々の笑顔を集める活動を行っています。
水谷さんが信じる「Merry」(楽しい・幸せ・夢いっぱい)な笑顔の力が、これからどのように街に広がっていくのか、お話を伺いました。

第1回 笑顔を集め、広げる<Merry Project>
震災後、被災地を訪れて笑顔の撮影会を行なった

「笑顔は世界共通のコミュニケーション」を合言葉に、<Merry Project>(※1)という活動をしています。プロジェクト名は、「Merry Christmas」の「Merry」から来ていて、「あなたにとってMERRY(楽しいこと、幸せなとき、将来の夢など)とは、何ですか?」 というシンプルな質問を世界中の人々に投げかけ、その笑顔とメッセージを取材して発信することで、笑顔で人を、社会を、地球を幸せにしていこうというプロジェクトです。
先日、震災のあった東北で支援活動をしてきました。被災地の方にラーメンやソーセージなどを食べてもらった後に撮影やインタビューをさせてもらいました。人は美味しいものを食べると自然に笑顔になるものです。そのあと、一緒に笑顔の傘をみんなで開くと、その場の空気がパッと変わりました。
「震災が起きてから今までずっと暗かったけれど、今日は久しぶりに笑ったし、ちょっと元気になったわ」と喜んでいただいて、中には「将来、<Merry Project>のスタッフになりたい」と言ってくれた高校生までいました。うれしかったですね。
今後の展開として、取材した彼らの笑顔をデザインした傘や大きなポスターを地元の避難所をはじめ全国各地に張っていきます。すでに福島県では多くの場所で掲出される予定です。

※1 <Merry Project>の一環である「Merry Umbrella Project」「Merry Farming」は2010年グッドデザイン賞を受賞。世界26カ国で撮影した30,000人以上の笑顔とメッセージはウェブサイトでも見ることができる。

暗くなった街を、笑顔が明るく照らし出す

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震災が起こって、節電や自粛ムードがあって東京もどんどん暗くなっていきました。僕の事務所から見える東京の景色も暗く、気持ちまで落ち込んでいくような雰囲気で。
僕は電力というエネルギーを半分にしても、電力に代わって笑顔が街に氾濫すればみんなの気持ちもポジティブになるし、非常にエコなやり方でみんなを幸せにできると思っています。「笑顔があっても、お金がなければ何にもならない」と言われることもあるのですが、僕はやはり人間は思いや気持ちが一番重要で、それが形になっていくものだと思うんです。負の遺産があるところを、笑顔で解決していきたいですね。

プロフール

アートディレクター。1951年、名古屋市生まれ。日本デザインセンターを経て、83年水谷事務所設立。80年代、数々の大手企業の広告を手がけ、1982年 東京ADC賞をはじめ、JADGA新人賞、N.Y.ADC国際賞・金賞・銀賞、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ展金賞・銅賞・特別賞、ブルーノ国際グラフィックデザイントリエンナーレ銅賞・特別賞、コロラド国際ポスター招待展最高賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞ほか、国内外のグラフィックデザイン界において数々の賞を受賞。99年より「MERRY PROJECT」を開始。05年愛知万博「愛・地球広場」、08年北京オリンピック、10年上海万博などに招聘。現在、東日本大震災支援プロジェクト「MERRY SMILE ACTION」を展開中。「みんなの笑顔は未来への希望」というメッセージをコンセプトに、被災地に笑顔を増やすため、東北地方で希望を持って生きる人々の笑顔を取材している。これまで世界26カ国で撮影した30,000人以上の笑顔はウェブサイトで閲覧することができる。近著に『デザインは奇跡を起こす』『東日本大震災を乗り越えて・ともに生きる』(PHP研究所)。