森ビル株式会社

都市の中心で、生と死の間の幽体を探す(第2回)

2011年02月10日

今月のゲスト:美術家・彫刻家 小谷元彦さん

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2010年11月27日〜2011年2月27日まで、森美術館で開催されている『小谷元彦展:幽体の知覚』。
美術家・彫刻家の小谷元彦さんは、彫刻や映像のインスタレーションから写真作品まで様々なメディアを横断して作品を作り続け、今後の日本の現代美術界を担う作家として国内外で注目されています。小谷さんは今回の展覧会を「レトロスペクティブではなくファーストステージの終了」と位置づけし、すでに次の作品の制作活動を始めていると言います。小谷さんが、今回の展覧会で得たものや感じたものとは何だったのでしょうか。展覧会の会期中に、お話を伺いました。

第2回 「幽体」を探す、展覧会のイメージ
展覧会自体が循環システムとなる

今回、森美術館で開催している展覧会のタイトルは『小谷元彦展:幽体の知覚』。「幽体」という言葉は「死」を指しているのではなく、「生」と「死」の中間状態にあるような肉体や精神のことを指しています。僕は、展覧会自体が「幽体」を探す状態であり、最終的にはひとつの循環システムのように機能させることができるんじゃないかと考えました。
あとは展覧会を見てもらう時に、『不思議の国のアリス』の世界で起きる、体が大きくなったり小さくなったりするような感覚を持ってもらえたらいいなという大雑把なイメージは持っていたんです。この身体感覚は、僕の思う彫刻的な身体感覚や概念と共振する部分もあって展覧会の一つのイメージとなっています。

今回の展覧会は、ファーストステージの終了

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小谷元彦《ファントム・リム》1997年
Cプリント/148 x 111 cm (各、5点組)
高橋コレクション、東京
撮影:木奥恵三 /写真提供:森美術館

今回の展覧会はレトロスペクティブに思われがちですが、僕はまだ38歳で、回顧展をやるような年齢ではありません。作家としては発育途中です。ベースのようなものができてファーストステージが終了したというところでしょうか。これからまた取捨選択しながら、より複雑に交配して次の展開を図れるのではないかとイメージしています。
今後の予定はまだ決まっていないのですが、森美術館で展覧会をするということは大きなアクションだと思うので、そのリアクションが起きて次に繋がってくれることを期待しています。

プロフール

1972年、京都府生まれ。1997年、東京藝術大学大学院美術研究科修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2003年)をはじめ、リヨン現代美術ビエンナーレ(2000年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2001年)、光州ビエンナーレ(2002年)など数多くの国際展に出品。これまでの主な個展に、「ファントム・リム」(Pハウス、1997年)、「モディフィケーション」(キリンプラザ大阪、2004年)、「小谷元彦/Hollow」(メゾンエルメス、2009-2010年)、主なグループ展には、「日本ゼロ年」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、1999年)、「現代美術の皮膚」(国立国際美術館、2007年)、「ネオテニー・ジャパン」(鹿児島県霧島アートの森/札幌芸術の森美術館/上野の森美術館、2007-2008年)などがある。