森ビル株式会社

都市の中心で、生と死の間の幽体を探す(第1回)

2011年02月04日

今月のゲスト:美術家・彫刻家 小谷元彦さん

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2010年11月27日〜2011年2月27日まで、森美術館で開催されている『小谷元彦展:幽体の知覚』。
美術家・彫刻家の小谷元彦さんは、彫刻や映像のインスタレーションから写真作品まで様々なメディアを横断して作品を作り続け、今後の日本の現代美術界を担う作家として国内外で注目されています。小谷さんは今回の展覧会を「レトロスペクティブではなくファーストステージの終了」と位置づけし、すでに次の作品の制作活動を始めていると言います。小谷さんが、今回の展覧会で得たものや感じたものとは何だったのでしょうか。展覧会の会期中に、お話を伺いました。

第1回 森美術館で展覧会を開催すると決まって
「選ばれし者の恍惚と不安」を抱えて

2010年11月27日〜2011年2月27日まで、森美術館で『小谷元彦展:幽体の知覚』が開催されています。オファーをいただいたのは、会期がスタートする1年半ほど前。正直に言うと、その時は「僕じゃ無理だな」とお断りしようと思っていたんです。
これまでにどんなアーティストが森美術館で展覧会を行ってきたかというのも知っていましたから、プロレスラー前田日明が言う「選ばれし者の恍惚と不安」という感じで、今の僕に役目が務まるのかどうか悩んでいました。
「自分には抱えきれない」という理由で断ろうとしていた時、大学の後輩にたまたま会って色々と話をしました。そのうちに、今回オファーがあったことは自分に課せられた宿命なのかもしれないと思うようになって気持ちが少し固まったんです。タイミングは大切ですから、ここで展覧会をこなせなければ、次には何も待っていないんじゃないかと考えて、腹をくくってオファーを受けることにしました。

展覧会で見えた、空間と身体との関係

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小谷元彦《インフェルノ》 2008-10年
ビデオ・インスタレーション:8面同期ハイビジョン・ビデオ・プロジェクション、4.1chサラウンド・サウンド、556×φ610 cm、5分37秒(ループ)
作家蔵/サウンド:高嶋 啓
制作協力:ステッチ、マックレイ
撮影:木奥恵三/写真提供:森美術館

展覧会のオファーをお受けするということになってから一番考えて、一番やりがいがあったのは、会場を埋めることです。作品については、途中で中断したプランもたくさんありますし、考えることも当然たくさんあったんですが、思考自体は固まっていました。
会期がスタートする1カ月前くらいには、自分が今までやってきたことの全貌が見えてきて冷静になれて、自分が制作する上での次の風景が見えたんです。空間と身体との関係自体をどう扱えば良いのかというのがもっと広く認識できたことが、今回得られた大きなことかもしれません。

プロフール

1972年、京都府生まれ。1997年、東京藝術大学大学院美術研究科修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2003年)をはじめ、リヨン現代美術ビエンナーレ(2000年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2001年)、光州ビエンナーレ(2002年)など数多くの国際展に出品。これまでの主な個展に、「ファントム・リム」(Pハウス、1997年)、「モディフィケーション」(キリンプラザ大阪、2004年)、「小谷元彦/Hollow」(メゾンエルメス、2009-2010年)、主なグループ展には、「日本ゼロ年」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、1999年)、「現代美術の皮膚」(国立国際美術館、2007年)、「ネオテニー・ジャパン」(鹿児島県霧島アートの森/札幌芸術の森美術館/上野の森美術館、2007-2008年)などがある。