森ビル株式会社

プラネタリウムに宇宙と都市の魅力を込めて(第5回)

2011年01月28日

今月のゲスト:プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん

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大平貴之さんの職業は、”プラネタリウム・クリエーター“。少年時代からプラネタリウムの自作を始め、1998年に150万個の星を映し出すプラネタリウムシステム≪メガスター≫を開発。≪メガスター≫のバージョンアップを続けながら、これまで世界中にいくつもの星空を作り続けてきました。
2月13日まで六本木ヒルズ森アーツセンターで開催されている「スカイ プラネタリウム」も、大平さんが手掛けた作品のひとつです。宇宙のスケールや星座のロマン、地球上の都市の鮮やかさなど、プラネタリウムを通して大平さんが伝え続けている星空の秘密や都市の魅力について、話を聞きました。

第5回 日本のプラネタリウム文化を世界に
世界各地で星空を作りだすメガスター

今後も、いくつかのプラネタリウムへの≪メガスター≫※の常設が予定されています。ひとつは茨城県の日立シビックセンターに「メガスターIIA」という常設用メガスターの最新型が設置されます。
海外での展開も活発で、2010年はインドで2台の≪メガスター≫が設置されました。2011年はヨーロッパに2台設置する予定です。そのうちの1台はポーランドの大きな科学館。設置後すぐに、ヨーロッパ中の科学館や博物館関係者などが集る大きな国際会議の開催が決まっていて、その場所にメガスターを設置できるというのはとても名誉なことで意義深い仕事だと感じています。もう1台は、エストニア。ここに設置するのは、ボールのようなドームの中に設置される全天球投影のメガスターで、上も下も360度星空が見られる、まるで本当に宇宙空間に浮かんでいるような体験ができるシアターが間もなく出来上がります。

エンジニアリングが広げる星空の世界

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六本木ヒルズ「スカイ プラネタリウム」

プラネタリウムはもともとドイツで発明されたもので、戦前から戦後にかけて日本に輸入されてから少しずつ普及してきました。ヨーロッパを起源に持つプラネタリウムですが、数百万個もの星を映すという日本人ならではの発想と技術が生み出した≪メガスター≫の繊細な星空やプラネタリウム文化が海外にも浸透していったら良いなと思っています。
僕の肩書は「プラネタリウム・クリエーター」ですが、クリエーターであると同時にエンジニア。ただ星のことを研究するというよりも、機械の作り方を考えたリコンピューターのソフトウエアを考えたリ、先端的な技術を調べるといった仕事がほとんどです。テクノロジーという材料を利用して、世界中で通じる魅力的なものをいかに作りあげるかということが、この仕事の面白さだと感じています。

自然界の星空が教えてくれること

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六本木ヒルズ「スカイ プラネタリウム」

僕がプラネタリウムを作っていく上で、東京という街は欠かせません。機械を作る仕事をしている以上は最先端のテクノロジーと情報が必要ですし、出来上がったものを発表する場が多くあるという意味でも、東京は最適の場所と言えます。東京が他の都市と比べて圧倒的にバラエティに富んでいるということは、カラフルな街明かりの多様性を見ればわかります。キレイな本物の星空と都会の街明かりは両立が難しいのですが、だからこそプラネタリウムで人口の星空を楽しんでいただいて、空気の澄んだ山奥まで足を運んで本物の星を見たくなるようなきっかけづくりを東京から発信していきたいと思っています。
≪メガスター≫の星空は、当然まだ本物の星空とイコールではありません。人工の≪メガスター≫を見続けることで少しずつズレていく感覚をニュートラルにするという意味でも、本物のきれいな星を見に行く機会は増えています。最近も、海外だとオーストラリア、国内では長野県の山奥などにカメラを持って行って撮影をしてきました。
普段、人工のものを目にしていても、実際に自然の星空を見ることで「天の川の明るさってこんな感じだったんだ」と再発見できますし、それを≪メガスター≫の製作に生かしています。

プロフール

1970年、神奈川県生まれ。プラネタリウム・クリエーター。東京大学特任教員、和歌山大学客員教授。小学生の頃からプラネタリウムの自作に取り組み、大学時代に、アマチュアでは例のないレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」の開発に成功。1998年にこれまでの数百倍にあたる150万個の星を映し出す「MEGASTAR(メガスター)」を発表する。2004年には日本科学未来館と共同開発した、投影星数560万個のMEGASTAR-II cosmos がギネスワールドレコーズに認定される。愛知万博をはじめとした各地での移動公演の他、アーティストとのコラボレーションなどを積極的に行い、プラネタリウムの新機軸を確立。 文部科学大臣表彰ほか受賞多数。