森ビル株式会社

プラネタリウムに宇宙と都市の魅力を込めて(第2回)

2011年01月07日

今月のゲスト:プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん

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大平貴之さんの職業は、”プラネタリウム・クリエーター“。少年時代からプラネタリウムの自作を始め、1998年に150万個の星を映し出すプラネタリウムシステム≪メガスター≫を開発。≪メガスター≫のバージョンアップを続けながら、これまで世界中にいくつもの星空を作り続けてきました。
2月13日まで六本木ヒルズ森アーツセンターで開催されている「スカイ プラネタリウム」も、大平さんが手掛けた作品のひとつです。宇宙のスケールや星座のロマン、地球上の都市の鮮やかさなど、プラネタリウムを通して大平さんが伝え続けている星空の秘密や都市の魅力について、話を聞きました。

第2回 立体的な星空を体験する≪3Dスカイウォーク≫
≪3Dスカイウォーク≫で伝えたかった宇宙のスケール

これまでのプラネタリウムで体験してきた星空は、どこか平面的に感じなかったでしょうか。当然、星座は立体的な構造をしています。オリオン座を例に挙げると、地球から見ると真ん中の三ツ星は3つ横に綺麗に並んでいるように見えますが、宇宙空間では、それぞれの地球からの奥行きの距離はバラバラです。ですから、地球から何十光年と離れてしまえば、3つの星の並びは見え方が全く異なります。
今回「スカイ プラネタリウム」の≪3Dスカイウォーク≫で立体的な星空を作ったのは、それを実際に体で感じてほしいからでした。星座はあくまで地球から見える星の並びのひとつの形。オリオン座も、さそり座も、南十字星も、僕達が良く知っている星座達は、地球から離れれば形は全くわからなくなってしまいます。それぞれ星と星の間には距離があって奥行きが近い星も遠い星もある、立体的なものだということを感じて欲しかったんです。
地球で暮らしている僕らから見て、場所や時間が変わっても星座の見え方が移り変わらないというのは、いかに星座の世界のスケールが大きいかということを表しています。僕達の日常とはかけ離れた、桁違いのスケールの大きさを、≪3Dスカイウォーク≫で感じてもらいたいと思っています。

星空のストーリーを実現させるまで

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六本木ヒルズ「スカイ プラネタリウム」
≪3Dスカイウォーク≫

≪3Dスカイウォーク≫というゾーンで立体的に星を配置するということを決めた時に、単なる地上から見たキレイな星空ということではなく「東京から宇宙に向かっていって、宇宙の果てまで旅をする」というストーリーが思い浮かんだんです。
立体的に星を配置するのは初めての試みだったということもあり、スタートする前は思い描いていることが本当に実現できるのか不安も大きかったのですが、施工関係の皆さんの協力によって形にすることができて本当に良かったと思っています。施工している最中には照明が付いているので星空の様子はわからないのですが、完成したときに初めて照明を全部落として星が輝く様子を眺めたときは、自分でも感動しました。

プロフール

1970年、神奈川県生まれ。プラネタリウム・クリエーター。東京大学特任教員、和歌山大学客員教授。小学生の頃からプラネタリウムの自作に取り組み、大学時代に、アマチュアでは例のないレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」の開発に成功。1998年にこれまでの数百倍にあたる150万個の星を映し出す「MEGASTAR(メガスター)」を発表する。2004年には日本科学未来館と共同開発した、投影星数560万個のMEGASTAR-II cosmos がギネスワールドレコーズに認定される。愛知万博をはじめとした各地での移動公演の他、アーティストとのコラボレーションなどを積極的に行い、プラネタリウムの新機軸を確立。 文部科学大臣表彰ほか受賞多数。