森ビル株式会社

ピアニストとして、中村紘子が伝え続けたいこと(第4回)

2010年07月23日

今月のゲスト:ピアニスト 中村紘子さん

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ピアニストとしてデビュー50周年を迎えた中村紘子さん。日本人初の入賞と併せて最年少で受賞した第7回ショパン・コンクールを始め、数々のコンクールで入賞。その演奏は高く評価され、3500回を超える演奏会で世界中の観客を魅了してきました。
また、国際的なピアノコンクールで審査員を歴任し、著書『チャイコフスキー・コンクール~ピアニストが聴く現代~』(中央公論新社刊)で第20回大宅壮一ノンフィクション賞を、『ピアニストという蛮族がいる』(文藝春秋刊)で文藝春秋読者賞を受賞するなど、文筆業にも積極的に取り組まれています。「ピアノはメッセージを伝えるための手段」と話す中村さん。演奏会で訪れた世界の国々で感じた、都市の在り方や、聴衆との出会いについて話を聞きました。

第4回 世界中での演奏会を通じて東京に思うこと
六本木ヒルズを中心とした東京での楽しみ方

自宅が近いこともあって、六本木ヒルズの周辺はよく散策しています。運動不足を感じた時には、ヒルズの駐車場に車を入れて、ウィンドーショッピングをしながら歩き回るんです。それは結構な運動量になるのですが、たくさんあるレストランに心惹かれて、一軒ずつ食べて回っているところです。六本木やお台場のような楽しいところに行くにもアクセスしやすいし、東京に住んでいると誘惑が多いですね。

世界の国々で人との出会いを大切にして

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アルバム「ドラマティック〜中村紘子 プレイズ・ショパン〜」

世界中の色々な国を訪れていると言っても、100%コンサートや仕事で行くので、観光をすることがないんです。だから、どこに行っても同じで、着くや否や空港からホテルに入って、確保した練習場で練習して、お風呂に入って寝るだけ。食べ物に気を配っている余裕もないので、グルメもなかなか楽しめません。本当にいいレストランは早い時間で終わってしまうし、女性1人旅を受けて入れてくれるところも少ないんです。
だから何と言っても旅で印象に残るのは、景色や食事よりも、人ととの出会い。20世紀のソビエトを始めとした共産圏をたくさん旅行したときに、困難な生活状況のなかで、親切な人に出会ってそれだけで良い旅だと思えました。
人との出会いによって、その国のイメージが良いものになるんです。その体験があるので、自分が東京にいるときには、海外からのお客様のことはできる限りお世話をしたいと思っています。例えば、自宅にお招きして手料理を御馳走してあげると、訪れた国の日常生活に入って寛ぐことができると多くの人が喜んでくださいます。

プロフール

東京生まれ。3歳で、桐朋学園音楽科の前身『子供の為の音楽教室』第一回生として井口愛子氏に師事。慶応義塾中等部3年在学中に、第28回音楽コンクールにおいて史上最年少で第1位特賞受賞。翌年、NHK交響楽団初の世界一周公演のソリストとしてデビュー。以後、国内外で3500回を越える演奏会を行う。チャイコフスキー・コンクール、ショパン・コンクールをはじめ数多くの国際コンクールの審査員を歴任する。2009年、恩賜賞・日本芸術院賞・紫綬褒章受章。秋にデビュー50周年を迎えた。著書に、『ピアニストという蛮族がいる』(文藝春秋刊)『コンクールでお会いしましょう~名演に飽きた時代の原点~』(中央公論新社刊)他。