森ビル株式会社

原 研哉が見つめる理想の都市とデザイン(第1回)

2010年06月04日

今月のゲスト:グラフィックデザイナー 原 研哉さん

1006_img.jpg

展覧会「REDESIGN」や「SENSEWARE」の総合ディレクションや、無印良品のアートディレクションなどを手掛けるグラフィックデザイナーの原研哉さん。日本文化の「粋」や「間」の思想に根付いた、過剰な装飾を排したシンプルなデザインが国内外で支持されています。
原さんが語る都市やデザインの話からは、彼がデザイナーとして大切にしている「コミュニケーション」や「日本の美意識」といったキーワードが浮かび上がってきました。

第1回 つぶやきながら、メディアの過渡期に思うこと
電子メディアと紙と、フットワーク軽くやっていきたい

こんにちは、グラフィックデザイナーの原 研哉です。
今年の初めから、ツイッターをやり始めました。フォロワーが増えていくことで、不思議とモチベーションが上がっていって、最近は習慣のようになっています。でもツイッターをやっているからと言って、“電子メディア派”というわけではなくて、個人的には紙の本が好きですし、“紙派”だと言えるかもしれません。
身体を基本に、持って生まれた感覚を豊かに開花させていかに世界と向き合うか、ということをテーマにした「HAPTIC」※1という展覧会も企画しているような立場なのですが、デザインする時には、もちろん電子メディアの可能性は否定できない。電子メディアがどんなものなのか、どこまでいけるのか、ということがわかっていないと、紙にも立ち帰ってこられないと思うんです。だから、電子メディアと紙と、両方フットワーク軽く色々やってみることが大切だと考えています。

選択肢が増えていくという感覚を持つ

1006_1_1.jpg
HAPTIC LOGO/原 研哉

ツイッターでつぶやくことは必ずしも電子メディア上で終始するわけではなくて、具体的に人と顔を付き合わせる機会だって増えるかもしれない。同じようなことを考えている人たちといい形で繋がる可能性もありますし、フィジカルな素晴らしい出来事がつぶやきを通して起きることもあると思うんです。色々なところに顔を突っ込んでみて、色々なものを通して物を考えてみるということが、今は大事かなと思っています。
人も、物も、メディアも、お別れは来るものですよ。例えば、これまで盛んに発行されていた雑誌が休刊になってしまったら寂寥感はある。けれど、その分だけ新しい出会いも増えているということですから。古いものがなくなって新しいものにとって代わる、というよりも、新しい可能性が1つ増えることで選択肢が増えていく、という考え方で物事に接していければいいと思っているんです。


※1 TAKEO PAPER SHOW 2004 HAPTIC展:「物づくりのモチベーションがテクノロジーの側から供給される状態が久しく続いています。HAPTIC展は、新素材に駆り立てられるのではなく、人の感覚を発端とする物づくりを意図的に際だたせる試みです。(HPより抜粋)」。関連書籍『HAPTIC 五感の覚醒(朝日新聞社)』発売中。

プロフール

1958年生まれ。グラフィックデザイナー。日本デザインセンター代表。武蔵野美術大学教授。展覧会「REDESIGN」や「TOKYO FIBER / SENSEWARE」など、デザインの領域を広く捉えて多方面に渡るコミュニケーションプロジェクトを生み出している。2001年より、無印良品のボードメンバーとなり、2003年度東京アートディレクターズクラブ賞グランプリを受賞。書籍に関連するデザインでは講談社出版文化賞、原弘賞、亀倉雄策賞、一連のデザイン活動に対して日本文化デザイン賞を受賞するほか内外で数多くの賞を受賞している。著書に『デザインのデザイン』(岩波書店/サントリー学芸賞受賞)、『白』(中央公論新社)、『なぜデザインなのか。』(平凡社/共著)「『ポスターを盗んでください+3』(平凡社)ほか多数。