森ビル株式会社

坂本龍一から次の世代に伝えたいこと(第2回)

2010年04月09日

今月のゲスト:音楽家 坂本龍一さん

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東京で生まれ育ち、ニューヨークを拠点に世界中で活躍している音楽家の坂本龍一さん。現在もローマでインスタレーション展示「LIFE- fii...」(ライフ・エフアイアイ...)を開催中です。世界の様々な都市を舞台に活動する坂本さんの話からは、都市やそこで暮らす人々に対する想い、考え方が浮かび上がってきました。
「もっと木を」というコンセプトで森の保守などを行う『more trees』や、音楽に携わる人々の共有地を目指すレーベル『commmons』、そして中学生や高校生を対象にワークショップを行いながら進行するテレビ番組『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』など、多岐に渡る活動のひとつひとつには、坂本さんのその考えを背景にした、次世代に伝えていきたい想いが込められています。

第2回 レーベル『commmons』で実現したいこと
音楽を作る人の「共有地」、『commmons』とは

僕達がやっているレコードレーベル『commmons』の名前は、「commons」という英語の本来の「共有地」という意味ーイギリスやボストンにも「commons」という公園がありますがーに由来しています。
皆があまりCDを買わないこの時代に、単なるレコードレーベルを立ち上げようというという気はなかったので、空間やツールとして機能する、音楽を作っている人たちの共有地を作れないか、と考えました。僕達は単に音楽を作っていればいいというわけではなくて、法律的なことや、海外とのやりとりなど、やることはたくさんあるんです。音楽をやる人間やそれを楽しむリスナーはむしろ増えているくらいなので、そういったことを相談したりやり方を共有できる場所を作ろう、と考えて発想しました。

『commmons』が大切にする「think globally, act locally」

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CDアルバム「CC:01」

『commmons』が大切にしているのは、「think globally, act locally」。
1つのモデルや法則があって、皆がそれに従えばうまくいくという時代や世界ではありませんよね。「act locally」というのは、東京、世田谷区とか、実際の意味も含んでいるけれど、例えば、それぞれの職種、その現場ーぼくの場合なら音楽ですがーという面も持っています。地震だったり環境問題だったり人それぞれで良いのですが、世界的な出来事に対する広い視野を持ちつつ、そこで得た知見をどうやって自分の足元に落とし込んでいくかということが大事なんです。

プロフール

1952年東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、 細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞他を、映画『ラストエンペラー』の音楽でアカデミー賞、グラミー賞他受賞。環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists'powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。 1990年より米国、ニューヨーク州在住。avexと共に『commmons』を設立。2010年4月より、NHK教育にて音楽レギュラー番組『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』がスタート。