森ビル株式会社

坂本龍一から次の世代に伝えたいこと(第1回)

2010年04月02日

今月のゲスト:音楽家 坂本龍一さん

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東京で生まれ育ち、ニューヨークを拠点に世界中で活躍している音楽家の坂本龍一さん。現在もローマでインスタレーション展示「LIFE-fii...」(ライフ・エフアイアイ...)を開催中です。世界の様々な都市を舞台に活動する坂本さんの話からは、都市やそこで暮らす人々に対する想い、考え方が浮かび上がってきました。
「もっと木を」というコンセプトで森の保守などを行う『more trees』や、音楽に携わる人々の共有地を目指すレーベル『commmons』、そして中学生や高校生を対象にワークショップを行いながら進行するテレビ番組『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』など、多岐に渡る活動のひとつひとつには、坂本さんのその考えを背景にした、次世代に伝えていきたい想いが込められています。

第1回 次世代のために、やっておきたいことがある
『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』がスタート

4月3日からNHK教育で音楽レギュラー番組『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』がスタートします。『commmons』※1というレコードレーベルから出している、『commmons: schola(コモンズスコラ)』※2という音楽全集のようなシリーズがあって、その映像版というのでしょうか。中学生以上の子供達に向けて音楽の学校のようなイメージで作っているテレビ番組です。
最初の回のテーマはバッハで、次がジャズ、そしてドラムス&ベースと続きます。番組の中でもその世代の子供達を呼んでワークショップなどを行っていて、それは僕にとっても楽しい経験になっていますね。僕も子供のころに、周りのいい先生や親だとか、色々な人にお世話になりながら音楽の勉強をしたので、その恩返しのつもりでやっています。

※1 坂本龍一を始めとするアーティストと、エイベックスが共同で設立した音楽プロジェクト
※2 坂本龍一総合監修による音楽の百科事典シリーズ。クラシック16巻と非クラシック14巻の全30巻で構成される

次世代のまだ見ぬ才能に期待して

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『commmons: schola(コモンズスコラ)』

音楽に関すること以外のプロジェクトでは、4年前に設立した『more trees』が僕の予想以上に発展しています。読んで字のごとく、「もっと木を」というコンセプトを持ったプロジェクトです。
日本には意外と森がたくさんあるので、その保守やメンテナンスを行い、熱帯雨林のように森林が伐採されているところでは、植林を行っています。これが僕も予想しなかったようなスピードで発展していて、現在日本に6つ、フィリピンに1つ、計7つの『more trees』の森ができているんです。
それから、昨今たくさんの企業がカーボンオフセットを取り入れるようになっていますが、森づくりを通じてカーボンオフセットに取り組んでいるのはおそらく僕らだけ。そのため企業から随分声をかけていただいて、厚い信頼を寄せていただきつつありますね。
今までのように自分のことだけ考えていれば、『スコラ』も『commmons』も『more trees』も始めていなかったかもしれませんが、最近はやはり次世代のために、やってあげたいことがあるな、という気持ちになってきたんです。当然、僕より若い世代のアーティストとも交流しているし、まだ見ぬ新しい才能に大いに期待しています。

プロフール

1952年東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、 細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞他を、映画『ラストエンペラー』の音楽でアカデミー賞、グラミー賞他受賞。環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists'powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。 1990年より米国、ニューヨーク州在住。avexと共に『commmons』を設立。2010年4月より、NHK教育にて音楽レギュラー番組『“スコラ”坂本龍一 音楽の学校』がスタート。