森ビル株式会社

スクリーンと向き合うなかで、見つめた都市の姿(第2回)

2009年11月06日

今月のゲスト:写真家・映画監督 若木信吾さん

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写真家として雑誌や広告などで活躍しながら、自身で出版社を興しジャーナル誌を発行するなど創作の場をますます広げている若木信吾さん。その若木さんが監 督した映画『トーテム Song for home』が公開された。台湾の原住民が住む台東という地域の青年が、台北でロックバンドとして活躍する姿を捉えたドキュメンタリー作品。自身の祖父を撮 り続けた写真作品シリーズの映画化として発表した『星影のワルツ』に続く監督作品第二作目となる。都市と故郷の間で揺れる青年の心を追いかけた若木さん は、東京で暮らしながら今何を思っているのだろうか。

第2回 ドキュメンタリー作品に詰まった美しい映像と音楽

映画2作目となる今回の『トーテム Song for home』はドキュメンタリーなので、ストーリーや台本がありません。写真家としては、もともとその方が得意なんですけれど。
撮っている間というのは、撮りながらも自分は今どんな映画を作りたいのかというのがわからないんですよ。ただ、自分に反応するように役者がしゃべってくれたり、いい風景があったら撮っていく。何かハプニングがあったら、とにかく撮っていくということを、ずっと重ねていきました。そして編集のときに、やっとわかってくる。この30時間以上の映像の素を使って、自分は何を理解したくて、何を人に伝えたいかというのを、編集しながらわかっていくという感じなんですよね。そうすると、何が足りないかもわかってくるので、また撮り足しに行ったり、そういうプロセスは面白かったです。やりがいがあるし、やっていて自分の中で湧き上がってくるものがあるから、すごく面白かったんです。

5年に1度映画を撮っていけたら御の字です

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HILLS CAST収録風景

今回の映画を見ていただいた人は、想像していたのとちょっと違うものになっているような感じはあると思うんです。僕にとっても台湾はものすごく遠い存在、遠い国だったから。たまたま今回撮ったのは台湾だったけれど、そこに住んでいる一人の青年の生き方を、音楽を通して楽しめてもらえればいいかなと思っています。
音楽って何も考えなくても感じられることなので。映画を見ていただいて何を考えるのかは、見た方それぞれの考えがあればいいと思うのですけれど、単純に音楽とか踊りとか、ビジュアル的なものというのがすごくいいものなので、その辺を感じてほしい。劇場に来ればそれがわかるので、ぜひ見てほしいなと思っています。
今後、映画はもう5年に1本とかぐらいのペースでできれば、本当に御の字ですね。お金も準備も、大変じゃないですか。でもやっぱり積み重ねていくことで25年やっていたら5本ぐらい撮れるかもって考えると、それはうれしいから、そのスタンスはなるべくキープしていきたいなと思っていますね。

プロフール

1971年静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真科卒業後、「The New York Times Magazine」「Newsweek」「Switch」「Elle Japon」「HF」「relax」など雑誌・広告・音楽媒体をはじめ、ライフワークとして自身の家族や友人を撮影した作品を発表している。中でも自身の祖父を被写体としたシリーズは『星影のワルツ』として映画化し、初めて映画監督を務めるなど、幅広い分野で活躍し注目される。また自身の出版社ヤングトゥリー・プレスを興し、個人的体験を一般公募で集めたジャーナル誌「youngtreepress」を発行し、個人的視点の集まりをドキュメンタリー・スタイルで表現することを追求している。