森ビル株式会社

街角で人と人が出会って、都市はもっと面白くなる(第1回)

2009年10月02日

今月のゲスト:放送作家 小山薫堂さん

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放送作家という肩書きを超えて様々なフィールドで活躍し、自身の職業をサービス業だと話す小山薫堂さん。人を喜ばせるために、感動させるために、これから計画していることについて話を伺った。
その一つが、旗振り役を務める「マルシェ・ジャポン」。プロジェクトの一環として、アークヒルズ内にて毎週土曜日に行われる「ヒルズマルシェ」もスタートした。都市にマルシェを作るこの運動は、生産者と消費者が出会うコミュニケーションの場として機能し、都市の活性化につながると小山さんは言う。これからマルシェを使って目指す都市のビジョンとはどのようなものだろうか。

第1回 旗振り役を務める『マルシェ・ジャポン』がスタート

「マルシェ・ジャポン」(2009年9月19日より全国で展開)の旗振り役、小山薫堂です。日本には昔から、地方都市などに、朝市があったりしますよね。これを都市に持ってきて、よくパリの街角にたくさんあるマルシェのように、よりスタイリッシュなマルシェを作ろうという、そういう運動です。
僕が1つ思うのは、今、皆さん安い物に手が伸びるじゃないですか。安い物が歓迎される時代にあって、もう一度本当の価値というものを見つめ直して、「高くてもいいから買いたい」とか「いい物を買いたい」、あるいは僕はいつも思うのですが、お金は拍手の機能もあると思うのですよね。自分が欲しい物を手に入れるための装置ということだけではなく、すごくいい仕事をしている人に拍手を送る。その人の生き方に拍手を送る。そのために、その人から物を買う。そういうふうにお金を使うようになると、ただ安い物ばかりがもてはやされる時代ではなくなって、この不況も少しは変わってくるのではないかと思います。

コミュニケーションの場、文化のサロンとしてのマルシェ

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ヒルズマルシェ

海外のマルシェに影響を受けたことはたくさんありますよ。特に印象深いのは、僕ヴェネツィアが大好きで、ヴェネツィアのマルシェがまた楽しいんですよね。
ちょうどホワイトアスパラが旬の時期に、ヴェネツィアのマルシェでたくさんフレッシュなホワイトアスパラを買いまして、それを売っていたおばさんに、調理の仕方なんかを少し教わって、持ち帰って作ってみたら、もう見事においしかったですね。
ちょっと繰り返しになりますけれど、やはりマルシェがあることによって、安い物だけを買うという消費形態ではない、「信頼した物を買う」とか「自分の目で選んだ物を買う」あるいは「ある人を応援するために、それを買ってあげる」、そういう優しさが生まれてくるのではないかなと思うのです。
食べ物からスタートしますけれど、そのうち例えば、アクセサリーを売りたいという人がいたり、自分のパフォーマンスを見せたいという人がいたり、コミュニケーションの場、文化のサロンみたいな感じでマルシェが発展していけば、街角がもっと面白くなるなと思うのです。

プロフール

1964年熊本県生まれ。放送作家。N35 Inc.代表、株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ代表。金谷ホテル顧問。日本大学芸術学部放送学科卒業。「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」など話題作を多く企画し、現在「THE世界遺産」(TBS)、「スペシャルギフト」(日本テレビ)他に携わる。初の映画脚本に挑戦した『おくりびと』で、第81回アカデミー賞の外国語映画部門賞受賞。コラムや小説の執筆、ラジオパーソナリティ、企業のプランニングなど、幅広いフィールドで活躍。著書に「随筆 一食入魂」(ぴあ)、「考えないヒント」(幻冬舎)、日本語訳を担当したフランス絵本「まってる。」(千倉書房)など。12/12公開予定の映画原作本「スノープリンス 禁じられた恋のメロディ」(角川つばさ文庫)が発売中。