森ビル株式会社

篠山紀信さんが考える面白い都市と美人の基準(第4回)

2009年08月21日

今月のゲスト:写真家 篠山紀信さん

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篠山紀信さん自身が選んだ、現代を象徴する注目の美人6人を写真に収めた展覧会『KISHIN : BIJIN』が表参道ヒルズで開催される。これまで美しい女性や変わりゆく都市の風景をファインダーを通して見つめ続けてきた篠山さんが、自身が考える美 人の基準や東京の面白さを語ってくれた。常にアンテナを張り、新しいことに挑戦しようとするその姿勢が、長く時代の第一線で活躍する秘訣なのかもしれな い。

第4回 東京で生まれ育ったものだからこそわかる面白さ

僕は、写真というのは、時代の映し鏡だと思っているわけですよ。だから「この人、面白いな、ちょっとそばに行って撮ってみたいな」とか、「変なものできたな、ちょっと行ってみよう」とか、「ここで何かすごいことが起こるみたいだ」とか、何かそういった勘がいつでも働くように、常にアンテナを張っているわけよね。
だから、いつも行動していないとだめですよね。例えば、外国人の人が「東京は面白い」って言うじゃないですか、それで「どこが面白いの?」というと、渋谷のスクランブル交差点とか、秋葉原だとか、だいたい決まっているんですよね。でも、そういうふうな外国人が見て面白いというところばかりじゃなくて、やはりそこに生まれて住んだ人間でなくちゃわからないような、東京の面白さってあるわけですよ。
同じ渋谷でも、一本裏に入るとだれからも忘れ去られたような空間というのがあるんですよね。そういうところを、それだけ撮ったんじゃあ、ただ「ごみ溜めか」みたいなことになってしまうけれど、そこにヌードのきれいな肉体をポーンと投げ込んだりすると、突然、その場所が「ああ、こういう変な面白いところなんだよな」って見えてくるわけですよ。

東京の近未来の時間と空間を先取りする

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「KISHIN : BIJIN」(川上未映子さん)

僕が都市を撮っているシリーズというのはいろいろあるのですけれど、それは日本人が見てもやっぱり変なものですよ。でも僕は、外国人が見ても「これは日本特有の面白さだ」というふうには見ていないのではないかと思う。日本特有の神社・仏閣が写っているわけではないから、東洋趣味というか、そういうことで「面白い」と言っているのとは違うんじゃないでしょうか。僕はあまり外国人の意見を聞いたことはないんですけれど、「これも東京なんだ。やっぱり変なところだよね、面白そうだね」ということはあるでしょうね。
でも例えば、宇宙のどこかの街のような、そういう架空の街を見ているような、そういう面白さを感じているんじゃないかな。僕も、実際の東京は使っているんだけれども、その中に秘めている、近未来の時間とか空間のようなものを先取りして撮っているという感じなんですよ。

プロフール

写真家/1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。在学中より新進写真家として頭角を現し、第1回APA賞等、数々の賞を受賞。広告制作会社「ライトパブリシティ」を経て、1968年よりフリー。
近年はデジタルカメラによる写真と映像の表現「digi+KISHIN」を、ウェブサイト「shinoyama.net」上やDVDで発表。作品集に『NUDE』『激写シリーズ』他。近年の写真集に『Santa Fe/宮沢りえ』『三島由紀夫の家』『人間関係』等。