森ビル株式会社

走ることで新しい自分と、東京と出会う(第4回)

2009年08月21日

今月のゲスト: 有森裕子さん

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元プロマラソンランナーの有森裕子さん。現役を引退してからは、NPO法人を立ち上げ、カンボジアの子どもたちとスポーツを通して交流したり、アスリート のマネジメント会社を立ち上げるなど、積極的にスポーツを通した活動を続けている。最近『有森裕子のマラソンブック フルマラソンで4時間を切る!』を発売し、改めてマラソンに向き合ったという有森さんが見つめてきた、スポーツの力や、変化する東京の人々とは。

第4回 走ってみえてきた東京の姿

私は、東京の街がこれ以上どうなってほしいというのはないです。ただ、住んでいる人たちが今以上に「自分たちの東京という街はこうだ!」という生き生きとしたものを、もっともっと出してほしいですし、その楽しみを持っている人たちが、やはりオリンピックを迎えるべきだと思いますね。「来た人たちにこんなおもてなしができるんだよ」という、そんな勢いが欲しいですね。これからあえて作らなければいけない物というのは、私はそんなにないと思います。だから、何か作るとしたら、やっぱりみんなの気持ちですね。
私もオリンピックに出場したときにいろいろなところに行って、そこで何が一番力になるかといったら、呼んでくれた国の人たちの笑顔であったり、ホスピタリティであると思うのです。そこが何となくしらけていると、どんなにすばらしい整った街でも、何か冷めていて活気のない感じになるので、物よりも、気持ちの入った東京であってほしいというだけだと思います。だから本当に「オリンピックを呼ぶから、こうしなければ」と思うようなことではなくて、「こういう街だから、オリンピックを呼びたいよね」と、そうことであってほしいなと願っています。

東京マラソンで変わった日本人の応援の仕方

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トレーニング風景

東京マラソンは海外のレースに比べても見劣りしませんし、大成功している大会だと思います。私も実際に参加してみて、今まで日本になかった海外のスタイルをパーフェクトに形にできた大会だなと思っています。ランナーだけが主役ではなくて、参加するすべての人が一体化して、どのポジションで参加をしてもすばらしい満足度を得られる、マラソンを通じて1つにつながるというようなことを、示せる大会になっているのではないかと思っています。
かなり応援が多いですよね。以前は日本の応援の仕方というのは、知っている人しか応援しないという非常に冷たい部分もあったんですけれど、この東京マラソンでは、走っている全ての人を沿道の人が全て応援するという、非常に海外のスタイルに近くなっていますね。
海外は走っている人に対するリスペクトがすごいんですよ。有名であろうがなかろうが、走ること、自己への挑戦をしている人に対してリスペクトする気持ちを感じることがすごく多かったです。東京でもそれに近いようなものが得られるなというのを、東京マラソンで感じました。

プロフール

1966年岡山県生まれ。日本体育大学を卒業後、(株)リクルートに入社。女子マラソンで、バルセロナオリンピックでは銀メダル、アトランタオリンピックでは銅メダルを獲得。『東京マラソン2007』で、プロマラソンランナーを引退する。1998年NPO「ハート・オブ・ゴールド」設立、代表就任。 2002年アスリートのマネジメント会社「ライツ」設立、取締役就任。現在、国際陸連(IAAF)女性委員、国連人口基金親善大使、他。米国在住。