森ビル株式会社

篠山紀信さんが考える面白い都市と美人の基準(第3回)

2009年08月14日

今月のゲスト:写真家 篠山紀信さん

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篠山紀信さん自身が選んだ、現代を象徴する注目の美人6人を写真に収めた展覧会『KISHIN : BIJIN』が表参道ヒルズで開催される。これまで美しい女性や変わりゆく都市の風景をファインダーを通して見つめ続けてきた篠山さんが、自身が考える美 人の基準や東京の面白さを語ってくれた。常にアンテナを張り、新しいことに挑戦しようとするその姿勢が、長く時代の第一線で活躍する秘訣なのかもしれな い。

第3回 六本木ヒルズに想うこと

六本木ヒルズは僕の自宅と、事務所のちょうど中間なんですよ。ですから、あのあたりのことは僕はよく知っているの。昔は、本当に消防車が入らないような細い道で、細かい家がたくさんあったんですよ。僕にとっては通勤路ですから、工事している間もいつも横目で見ていたんです。どんなふうになっちゃうのかなと考えながら、毎日見ているのは、すごく面白かったですね。
僕が六本木ヒルズの写真集をつくったときに、サイン会をやったのね。そうしたら「サインしてください」と来た1人の女性が「私はここに住んでいたんだ、初めは建築反対運動の方に入っていた。でも今これ(六本木ヒルズ)ができてみて、本当に私はこれができてよかったと思う」って言うんだよね。そういう人が、僕の本買ってくれて、「サインしてくれ」と言うんですよ。森ビルが六本木のあの場所に六本木ヒルズを建てたような、一種の違う発想でもってバーンと違う世界を作っちゃうというのは、すごく勇気が要ることだよね。でも、これ森ビルの番組だから言うわけじゃないけれども、作ってみたらそこに住んでいた人が本当に喜んでくれたというのは、よかったんじゃないですか。

新しい建物が建つときの怪しい風が面白い

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上)六本木ヒルズ建築前の風景
下)六本木ヒルズ建築後の風景

僕は東京生まれの東京育ちなんですよ。今もグルグルグルグル回っていますから、当然東京の写真が多いし、そしてやっぱり東京で撮った写真は、東京に返してやるのが一番いいのではないかと思って、東京で発表しているという感じですね。
例えば今、ちょうど都庁なんかが建っているところ、あそこは昔は淀橋浄水場といって浄水場だったんですよ。モルタル塗りの古い2階建てぐらいのアパートがターッとあったところが、突然地上げにあって、平地になって、都庁みたいな大きいものが突然、ムクムクムクムクと建ってくるじゃないですか。
そうすると、つむじ風のように何か風が渦巻くんですよ。地場が荒らされるというのかな、怪しい風が吹いてくる感じがする。それで超高層のビルの横には、まだモルタルのアパートが残っていたりなんかするでしょう。そういうところっていうのは、やっぱり写真家にとって、すごく魅力的な場所に見えるわけです。だから、そういうところにどんどんカメラを持って行くんですよね。

プロフール

写真家/1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。在学中より新進写真家として頭角を現し、第1回APA賞等、数々の賞を受賞。広告制作会社「ライトパブリシティ」を経て、1968年よりフリー。
近年はデジタルカメラによる写真と映像の表現「digi+KISHIN」を、ウェブサイト「shinoyama.net」上やDVDで発表。作品集に『NUDE』『激写シリーズ』他。近年の写真集に『Santa Fe/宮沢りえ』『三島由紀夫の家』『人間関係』等。