森ビル株式会社

走ることで新しい自分と、東京と出会う(第3回)

2009年08月14日

今月のゲスト: 有森裕子さん

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元プロマラソンランナーの有森裕子さん。現役を引退してからは、NPO法人を立ち上げ、カンボジアの子どもたちとスポーツを通して交流したり、アスリート のマネジメント会社を立ち上げるなど、積極的にスポーツを通した活動を続けている。最近『有森裕子のマラソンブック フルマラソンで4時間を切る!』を発売し、改めてマラソンに向き合ったという有森さんが見つめてきた、スポーツの力や、変化する東京の人々とは。

第3回 スポーツを通じた活動で感じたスポーツの力

スペシャルオリンピックスや、自分のNPOハート・オブ・ゴールド、この両方とも「さあ、やろう」と思って関わったわけではないんです。自分がマラソンを通して一生懸命頑張ってきたことを、生かせる場が別のところでもあるんだよといろいろな人に気づかせてもらったり、きっかけをもらったりして始まりました。
どちらもスポーツを軸とした活動ですから、自分がやってきたことと全く外れるわけではない。そういった意味では新たに生んだというよりも、必然的に生まれたやれるべきことを今やっているという感じですね。あとは特に、子どもたちの現場に足を運んでいろいろなことを伝えていきたいなと思っています。例えば、食の大切さとか、人とのコミュニケーションの大切さとか、生きていくのに一番ベースになるような大事なことを、スポーツという非常に楽しい手段を使って、全身で伝えていきたいなというのは、今も強く思っています。

スポーツが作りだすことのできる人間の原動力

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アンコールワット国際ハーフマラソン2009
運営協力:ハート・オブ・ゴールド

ハート・オブ・ゴールドはちょうど1998年からスタートして10年たつのですが、毎年この活動を通して、スポーツが人に対して及ぼすすばらしい影響に気が付きますね。活動を通して出会うカンボジアの人たちから、人間は少々のことではへこたれないんだなという、人間の生きる強さみたいなものを学びました。あと、活動に関われば関わるほど感じるのが、人間が自分で作りだした感動や喜びというものは、それほど強い力になって人を変えられるものはなくて、それをスポーツは作ることができるんだということ。スポーツは人間力をつけるためのすばらしい手段だと思います。
カンボジアの義手義足が必要な人たちや、スペシャルオリンピックスで出会う知的発達障害といわれる人たち、それぞれ抱えているものは違うんですけれど、すべての人が感動や喜びを味合うことですばらしい変化を持てて、そこは何ら変わりがないと思うんです。そのきっかけになるスポーツというものが生かせる場があるなら、この2つの活動だけじゃなくて、よりいろいろやっていきたいと思っています。

プロフール

1966年岡山県生まれ。日本体育大学を卒業後、(株)リクルートに入社。女子マラソンで、バルセロナオリンピックでは銀メダル、アトランタオリンピックでは銅メダルを獲得。『東京マラソン2007』で、プロマラソンランナーを引退する。1998年NPO「ハート・オブ・ゴールド」設立、代表就任。 2002年アスリートのマネジメント会社「ライツ」設立、取締役就任。現在、国際陸連(IAAF)女性委員、国連人口基金親善大使、他。米国在住。