森ビル株式会社

走ることで新しい自分と、東京と出会う(第1回)

2009年08月01日

今月のゲスト: 有森裕子さん

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元プロマラソンランナーの有森裕子さん。現役を引退してからは、NPO法人を立ち上げ、カンボジアの子どもたちとスポーツを通して交流したり、アスリートのマネジメント会社を立ち上げるなど、積極的にスポーツを通した活動を続けている。最近『有森裕子のマラソンブック フルマラソンで4時間を切る!』を発売し、改めてマラソンに向き合ったという有森さんが見つめてきた、スポーツの力や、変化する東京の人々とは。

第1回 『有森裕子のマラソンブック フルマラソンで4時間を切る!』を出版して

このたび、『有森裕子のマラソンブック フルマラソンで4時間を切る!』というタイトルで、私の持っているノウハウを詰め込んだ本をマガジンハウスから出版しました。
東京マラソンという、第1回目から3万人集めた非常に大きな、世界でも衝撃的だったマラソン大会がスタートしてから、あらゆるところで走る人を見かけるようになりましたよね。「随分、健康志向になったんだな」という流れが今起きているんです。でも、何となく気持ちだけ焦って走るということを始めて、まだやり方がわからなくて、逆に体を壊される方が多いという現状もやっぱりあるんですよね。
もう少しうまく、楽しく長く、健康につながるような走りをしてもらいたいなと考えていました。走ることはいろいろな人にできるんだけれど、段階を追って、きちんとステップアップを踏まないと体を壊してしまいます。ただ、それさえできれば、本当にちゃんとゴールに向かった楽しい走りができるようになりますよ、というのを伝えることをこの本ではメーンにしています。ある意味大雑把な面もあるのですが、わかりやすく、皆さんの日常に溶け込みやすい範囲のことを伝えられるような本を出したいと思ったんです。

マラソンは自分を高めてくれるスポーツ

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HILLS CAST収録風景

本を出版するためにこういうふうに自分自身でまとめてみると、マラソンというのはうまくやれば色々な人の日常に普通に馴染んで、とても手軽にできることでありながら、自分の体との対話もできるし、生活リズムを変えることもできるし、自分を高めていけるスポーツなんだということを改めて感じました。だからこそ皆さんに、走るということやマラソンへの挑戦という1つのきっかけを通して、心身ともに自分の健康ということについて改めて考えてみてほしいなというのを思いましたね。
書くときには、やっぱりどういう人が手にとるかわからないので、あまり極端に限定して「こうなんだ」ということを言い過ぎることはよくないなと考えていました。その人のフォームやスタイルを見て言わなければいけないことを、書いて終わってしまうという間違いを起こしやすいので。書いて、それが伝わって、すぐにその人が形にできるものというのは本当は少ないはずなんですね。なので、どこまでの範囲を書いて伝えるか、逆に書かないでどこからは実際の現場で伝えていくかという、その切り分けというのが非常に難しかったかな。

プロフール

1966年岡山県生まれ。日本体育大学を卒業後、(株)リクルートに入社。女子マラソンで、バルセロナオリンピックでは銀メダル、アトランタオリンピックでは銅メダルを獲得。『東京マラソン2007』で、プロマラソンランナーを引退する。1998年NPO「ハート・オブ・ゴールド」設立、代表就任。2002年アスリートのマネジメント会社「ライツ」設立、取締役就任。現在、国際陸連(IAAF)女性委員、国連人口基金親善大使、他。米国在住。