森ビル株式会社

変わりゆく東京を、被写体として見つめ続けて(第4回)

2009年07月24日

今月のゲスト:写真家 ホンマタカシさん

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写真家のホンマタカシさんの作品には、東京に関するものも数多く、なかでも六本木やお台場など、変わりつつある都市の風景を好んで被写体に選んでいるとい う。最近では写真教育に興味を持ち、『たのしい写真 よい子のための写真教室』という本も出版。国内外で活躍する彼は、被写体として、作品を発表する場と して、また写真教育を行う地として、東京をどう見ているのか。

第4回 東京こそ撮るべきテーマである

僕は東京に生まれ育ったので、東京というのはやっぱり自分のベースだし、自分が写真を撮るべき必然性があると思います。東京では、僕の写真を評価してくれるときには、東京の写真も海外の写真もいろいろごっちゃ混ぜで評価してもらえるんだけれど、一旦海外に行くと、圧倒的に評価されるのは東京の写真なんですよ。だから、東京で仕事をして撮影をすればするほど、海外で評価してもらえるので、僕にとっては、東京こそ撮るべきテーマなんだと思います。
写真って、押せば何でも写る。だから何でも撮れると思うのですけれど、だからこそきちんと理由をつけて、「撮らないものは撮らない」っていうふうに決めていますね。まあ、「その撮るのをどうやって決めているんですか?」って言われると困るけれど、僕の中ではきちんとした基準があるんです。僕が好きな写真家というのは、何でもかんでも撮る人じゃなくて、自分なりの基準がありますね。やっぱり、何でも撮れる今だからこそ、「撮らない」という基準をきちんとつけた方がいいと思っています。

東京で写真の仕事をするということ

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HILLS CAST収録風景

東京でのやりづらさっていうのも、もちろんありますよ。それはきっとみんなも感じているとおり、プレッシャーもすごいし、忙しいし、次から次へと物や人も出てきて消費されやすい。そういう意味ではやっぱり、すごく大変なところだなとは思っています。
逆に、東京で仕事をする良さもある。それはいっぱいの機会があるということですかね。例えば世界で一番、若手が写真集を出しやすい都市が東京なんですね。発表するチャンスというのは、すごくいっぱいあると思いますね。権威も歴史意識もない分、種種雑多な可能性がいっぱい、よくも悪くもある。
あとは、雑誌をうまく利用して自分の写真を撮るというのは東京の写真家の一番の利点だと思います。海外だと、自分の作品とアサイメントの仕事というのは、もっとはっきり分かれているけれども、東京は、その辺がいい意味でも悪い意味でも曖昧なんで。雑誌を利用して自分の作品を作るというのは、すでに諸先輩がやられているとおり、東京で仕事をするという意味でのアドバンテージだと思います。

プロフール

1962年東京生まれ。ライト・パブリシティに在籍後、独立。1991年よりロンドンに渡り、ファッション・カルチャー誌『i-D』で活動する。1999年『東京郊外』(写真集、展覧会)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。
主な作品集に『Tokyo and my daughter』(スイス:Nieves)、『きわめてよいふうけい』『東京の子供』『Babyland』(リトルモア)、『Hyper Ballad:Icelandic Suburban Landscapes』(スイッチパブリッシング)、『NEW WAVES』(パルコ)、『TOKYO』(米:Aperture)、『trails』(マッチアンドカンパニー)ほか。