森ビル株式会社

広告を通して、次世代に伝えていきたいこと(第4回)

2009年07月24日

今月のゲスト:アートディレクター 副田高行さん

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広告を作ることで、企業のメッセージを人々に伝えてきた、アートディレクターの副田高行さん。最近ではコピーライターの前田知巳さんと森ビルの企業広告も 手掛けるなど、私たちの記憶に強く印象を残す広告を数多く作り続けている。「いい物づくりをしよう」と、次の世代に伝えたい本音を語った彼の言葉には、日 本をもっと美しくしていきたいという熱い思いが込められていた。

第4回 未来の設計図を描いた、森ビル企業広告づくり

森さん(森 稔/森ビル代表取締役社長)が考えているのは立体緑園都市という、ちょっと近未来の都市づくりというか。日本はせまい国なんで、特に東京とか、限られたこの風土で、基本的には自然を生かしつつ、地下に入っても構わない建物…例えば、むしろ窓が邪魔だったりする映画館とか、コンサート会場とか鉄道とか。都市の機構を地下にという。そういう構想を森さんが持たれていて。それをこの50周年記念で世の中にプレゼンテーションしたいという思いが、今回の森ビルの企業広告を作る時の基本にありましたね。
普通は僕ら、全くさらの状態から考える場合もあるんですよ。でも今回は、森さんの頭の中にあるビジョンをどうするかでしたね。そうしてやっぱり結果として、すばらしいイラストが上がって。森社長の見る目があるというか、勘が鋭いというか。結果としてグッドチョイスだったなと思っています。

どんどん人に寄っていった、森ビルの未来の設計図

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森ビル企業広告
「空に希望を。地上に緑を。地下に喜びを。」

今回作った森ビルの企業広告は、作り始めるときにはもう少し大きな都市の図のビジュアルをイメージしていたんです。もっと簡単な略画で、人も小さく点に見えるくらい。でもイラストレーターが決まって、大枠の構図を見せるあたりから、範囲が狭くなっていきました。具体的に絵が出てきた段階で、森さんの中でもたぶん「やっぱり、このことを知らせたい」というのが出てきたと思うんですね。
どんどん寄っていって、立体緑園都市そのものに集約して、人間が加わって。今までこれだけの数の人間が広告で表現されているものはなかったと思うのですが、やっぱり今回作ったこの広告は、単なるビルの物件の広告ではなくて、森ビルという会社が考えている未来の設計図。こんなに楽しい世界があるんだという、そこがポイントですよね。そうして、絵が出てくるたびに修正が加わって…こんな長い期間、1つの広告づくりに携わるというのも、僕の40年ぐらいの広告づくりの歴史の中でも最初で最後かもしれません。

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プロフール

アートディレクター/1950年福岡県生まれ。東京育ち。東京都立工芸高校デザイン科卒。スタンダード通信社、サン・アド、仲畑広告制作所を経て、現在副田デザイン制作所主宰。トヨタ「ECOPROJECT」、サントリー「ウイスキー飲もう気分」など数々の広告を制作。中でもSHARP 「液晶AQUOS」の広告は、発売時より長年にわたり手がけている。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞など受賞多数。著書に『副田高行の仕事と周辺』(六耀社)。